全身ブランド品を着ているようなモデルやタレントの真似はできないが、都心部に出ないと買えないブランドではなく、ユニクロやGUなら、買い物に不便な地域に住んでいても身近に買えて、真似できる。そんな「地方にも広がる」感じも人気のようだ。
「背伸びせず無理しない感じが受けるように思います。その人がおしゃれであれば着られるというか。例えば今、女性がユニクロのメンズを着るのがファッションで流行です。シャツもメンズのSなら身幅があるので今年っぽく着られるとか、腰巻きするシャツは旦那さんのものを拝借するとか、ブレスやリュックなど小物をシェアしたり。そういう流行も、有名人や雑誌の編集部発信ではなく、普通の人からの流行だと思います。地方に住んでいて、一般の主婦だけれどおしゃれでフォロワーが多い。そういう人たちが考えてやったところから、すごく流行っている感じがしています」
そもそも一般人に人気が出たきっかけは、読者がファッションや美容、子育てなどを画像で投稿できる、雑誌『VERY』のソーシャルメディア『tagVERY』ではないかと川口さんは指摘する。プチプラブランド『nostalgia』で一般人モデルのようになっている岡山県の主婦・斎藤寛子さんも、ここへの投稿がきっかけで人気の人となった。
「斎藤さんは、先日は靴の新作発表イベントに芸能人と一緒にゲストで呼ばれたりするほど。『nostalgia』は、外国のモデルを使ってかっこよく撮っていた時にはそこまで認知度はなかったそうですが、モデルを普通の主婦にしたら即完売みたいになって、そこから一気に人気が出た気がします」
こうした素人のタレント化の流れを作ったのは、『VERY』の大人気モデル・滝沢眞規子さんからだという。主婦でもある滝沢さんは、読者モデルから人気に火がつき、専属モデルへと華麗なる転身を遂げている。彼女の例に憧れる一般女性も多いのではと川口さんはいう。
これまでのファッション誌を手本に読者がおしゃれしていた構図はいまや逆転。インスタグラムが広がった1、2年前から、ファッション編集部側もリアルが受ける時代の流れを汲み、一般の人からリアルな声を吸い上げようとSNSをチェックし、おしゃれな人を発掘している。
「みなさん、自分が良く見える撮り方もポーズも取れてすごいんですよね。しかも、写真ではそう見えませんが、実際には背が低い人ばかりなんです。160cm以下であることが、すごく受けていると思います。岡山の斎藤さんは、158cmで中肉中背とご自身で言っていますし。これで168cmと言ったらそこまで人気は出なかったのではないかと思います」