長島:当時の家具店は、お客さんが来るのは土日が中心でした。その点、生活雑貨を取り入れることで平日も賑わうようになったんです。大規模店として“ホームファッション”を取り入れたのはニトリが日本初でした。

――新しい売り方を見つけたニトリですが、安く売るのは容易だったのでしょうか?

長島:最初は倒産品などを集めて売っていたのですが、商品をだまし取られたりトラブルが続き、手を引いたんです。そこで始めたのが、メーカーから直接商品を買い取ること。当時は問屋がその地域の職人も束ねていたりと、圧倒的な力を持っていました。問屋を飛ばしてメーカーから買うことは業界ではご法度でした。それをばれないように取引していましたが、店をもっていた北海道でまずばれてしまい、最後は九州まで買い付けに行ったようです。

 その時に自分たちで配送もやっていたので、物流のノウハウも取り入れられたんです。ヨーカ堂の創業者なども師事していた経営コンサルタントの渥美俊一氏にアドバイスをもらったことも、ニトリが成長する大きな原動力となりました。その後は、コストを下げるために海外に自社工場をつくってメーカーとしても事業を広げていきました。

――お互いに独自の発展を遂げてきた大塚家具とニトリですが、最近の大塚家具騒動について、どう思われますか?

長島:大塚家具は経営権問題で杉の木に松を接ぎ木したようなもの。創業者である父・勝久氏が築き上げてきたものを、娘の久美子新社長が会員制をやめるなどして方向転換し、それで業績が上がらないから勝久氏が交代を命じた。つまり、接ぎ木を取ってはつけ、ということを繰り返していました。資本がしっかりしている会社なのですから、5年間でもいいからじっくり様子を見るべきでした。

 勝久氏の主張も、久美子新社長の主張も、それぞれ理解できます。でも、どちらかを選択するのではなく、久美子新社長が考える店づくりは新ブランドとして展開すれば良かったと思います。ニトリも家具は置かずに生活雑貨のみを売るデコホームをつくったり、銀座店を立ち上げたりもしました。銀座店は、これまでの店のスタイルは継続しつつ、デザイン性、素材にこだわったインテリアのコーディネートを提案するという新たなコンセプトを打ち出しています。今後、中価格帯の商品を増やして新たな客層をつかんで客単価を上げるための様子を見るという意味も込めているのでしょう。大塚家具もニトリも今後、動向を見守っていきたいですね。

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