「食文化」と「食の安全」はときとして矛盾をはらむ。文化のみを尊重すれば「安全」は担保できなくなるし、過剰に「安全」を意識していたら何も食べられなくなってしまう。
2011年に牛レバーの生食が禁じられた食中毒事件の直接の感染原因は「ユッケ」だった。だがその事件をきっかけに設備面や衛生面の条件が見直され、生食用の肉についても新たな基準が設定された。「当たったことがないから大丈夫」ではいつ不運に見舞われるかわからない。
アメリカでは食中毒防止のため、1997年から食肉への放射線照射が認められている。食の安全をどう解釈し、食のどこにどんな楽しみを見出すか。より「食」を楽しみたいというとき、「知」はその力になってくれるはずだ。