2度目の元寇となる1281年の「弘安の役」でも高麗軍の非道ぶりは際立っていた。蒙古襲来直後に成立した寺社縁起の一つである『八幡愚童訓』には、こんな記述がある。

《高麗ノ兵五百艘ハ壱岐・対馬ヨリ上リ、見ル者ヲバ打殺ス》

 この時、上陸した高麗兵を怖れ山奥に逃げた島民は赤子の泣き声を聞いた兵が押し寄せるのを避けるため、泣く泣く我が子を殺めたという。「地元では今でも泣く子をあやすための“むくりこくり(蒙古高句麗)の鬼が来る”という伝承が残っている。元寇は当時の日本人に700年経っても消せない恐怖心を植えつけたのです」(勝岡氏)

 しかも、元寇そのものが高麗の執拗な働きかけの産物だったと勝岡氏は指摘する。

「『元史』によると、フビライ・ハンに仕えていた高麗人の趙彜(ちょうい)が日本への使節派遣を促した。更に高麗の世子椹(後の忠烈王)もフビライに盛んに東征を勧めたという記録もあります。高麗が進言しなければ、元寇は起きなかった可能性すらあるのです」

 2度に及ぶ元寇は日本に深い傷跡を残し、その後の歴史を動かす原動力となった。

「元寇で窮乏した御家人が海賊となり、残虐な高麗に報復しようとしたのが倭寇の始まりです。秀吉の朝鮮出兵も、究極的な原因は元寇にあったという説すらあります」(勝岡氏)

 最大の問題は、この歴史的な事実を韓国が「なかったこと」にしていることだ。

「韓国の歴史教科書は、秀吉の朝鮮出兵に多くの紙幅を割く一方で、高麗が元をそそのかした経緯や、元寇における高麗軍の残虐行為には一切、触れていません。日本への加害は民族的記憶から消し去り、自らの被害だけを強調して教えているのです。“被害者の立場は1000年変わらない”と訴える韓国こそ、日本に対する“加害者だった歴史”を直視すべきです」(勝岡氏)

※SAPIO2015年7月号

関連キーワード

トピックス

雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
《雅子さま、62年の旅日記》「生まれて初めての夏」「海外留学」「スキー場で愛子さまと」「海外公務」「慰霊の旅」…“旅”をキーワードに雅子さまがご覧になった景色をたどる 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
《悠仁さまの周辺に緊張感》筑波大学の研究施設で「砲弾らしきもの」を発見 不審物が見つかった場所は所属サークルの活動エリアの目と鼻の先、問われる大学の警備体制 
女性セブン
清水運転員(21)
「女性特有のギクシャクがない」「肌が綺麗になった」“男社会”に飛び込んだ21歳女性ドライバーが語る大型トラックが「最高の職場」な理由
NEWSポストセブン
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《輝く金髪姿で再始動》こじるりが亡き夫のサウナ会社を破産処理へ…“新ビジネス”に向ける意気込み「子供の人生だけは輝かしいものになってほしい」
NEWSポストセブン
高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
中国でも人気があるキムタク親子
《木村拓哉とKokiの中国版SNSがピタリと停止》緊迫の日中関係のなか2人が“無風”でいられる理由…背景に「2025年ならではの事情」
NEWSポストセブン
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
東京ディズニーシーにある「ホテルミラコスタ」で刃物を持って侵入した姜春雨容疑者(34)(HP/容疑者のSNSより)
《夢の国の”刃物男”の素顔》「日本語が苦手」「寡黙で大人しい人」ホテルミラコスタで中華包丁を取り出した姜春雨容疑者の目撃証言
NEWSポストセブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン