芸能

日光猿軍団を引き継いだ村崎太郎氏 「ライバルは劇団四季」

日光猿軍団を引き継いだ村崎太郎氏

 歌舞伎、能、文楽など伝統芸能に見いだされる“日本なるもの”をノンフィクション作家・上原善広氏が浮き彫りにするシリーズ「日本の芸能を旅する」。今回紹介する猿回しの村崎太郎氏が、日光猿軍団について語る。上原氏が村崎氏に迫った。

 * * *
 猿回しの村崎太郎といえば「反省」の芸でヒットし、長く「太郎・次郎」のコンビでやってきた。それが閉園した「日光猿軍団」の跡を継ぐことになったというニュースは、テレビや新聞などで大きく報道されたから、知っている人も多いだろう。

 当初、村崎と「日光猿軍団」は、敵対関係にあった。警察沙汰も辞さないほどの苛烈な部落解放の運動家だった村崎の父、義正も型破りなら、「猿軍団」を立ち上げた間中敏雄も型破りだ。

 彼は路地(同和地区)の者たちが継承してきた門外不出の猿回し芸を、買い取った猿に独学で調教、それまで一人一匹が基本だった猿回しに、「団体芸」を取り入れた。これは実は、一人対一匹による高度な芸ができないことから出た苦肉の策だったが、これが爆発的な人気を得るようになる。

 間中は、「猿軍団」を立ち上げる前、猿の調教方法を教えてくれるよう、村崎の元に頼みに行っている。しかし当時、人気の絶頂期にあった村崎はそれを拒否した。以来、二人は敵対するようになる。村崎はこう話す。

「日光猿軍団ができてから二、三年目くらいに一度、見に行ったことがあるんですが、そのときは息子さんがホウキ持って『何しに来たッ』て険悪な感じでね。間中さんも渋々、会うっていう感じでした。そのとき『親父から教えられたけど、成功したときほど危ないですよ』とだけ伝えましたが、それっきりです」

 この父の言葉は、村崎自身にも、呪文のようにのしかかる。離婚や破産からうつにもなり、死の誘惑が常につきまとうようになる。

「どん底を見ました。一〇代で猿回しをはじめて、二〇代で人気が出て怖いものなし。そう思っていたら、そこから怖いものが出てきた(笑)。三〇代後半から四〇代くらいに歯車が狂ってきて、もう四〇代後半にはやめてしまおうと思ったこともあった」

 フジテレビの名物プロデューサーとの結婚など、話題には事欠かなかったが、芸と事業では失敗続きだった。

「前に上原さんと会った頃からかな。もう一度、メジャーに返り咲きたいと思ったんです」

 今から五年ほど前、二〇一〇年頃に、雑誌のインタビューで私は、初めて村崎に会っている。そのときの村崎は、髪を茶色に染めて金色の腕時計をして、業界人っぽい派手な格好をしていたが、何となく自信がないようにも見えた。今思えば、その頃はどん底の時代だったわけだが、そこまで悪かったようには見えなかった。しかし、本当にどん底にいる人は、他の人にそう悟られないようにするものだ。

関連記事

トピックス

4月12日の夜・広島県府中町の水分峡森林公園で殺害された里見誠さん(Xより)
《未成年強盗殺人》殺害された “ポルシェ愛好家の52歳エリート証券マン”と“出頭した18歳女”の接点とは「(事件)当日まで都内にいた」「“重要な約束”があったとしか思えない」
NEWSポストセブン
「最近、嬉しかったのが女性のファンの方が増えたことです」
渡邊渚さんが明かす初写真集『水平線』海外ロケの舞台裏「タイトルはこれからの未来への希望を込めてつけました」
NEWSポストセブン
「父としての自覚」が芽生え始めた小室さん
「よろしかったらお名刺を…!」“1億円新居”ローン返済中の小室圭さん、晩餐会で精力的に振る舞った理由【眞子さんに見せるパパの背中】
NEWSポストセブン
多忙なスケジュールのブラジル公式訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《体育会系の佳子さま》体調優れず予定取り止めも…ブラジル過酷日程を完遂した体力づくり「小中高とフィギュアスケート」「赤坂御用地でジョギング」
NEWSポストセブン
吉田鋼太郎と夫婦役を演じている浅田美代子(『あんぱん』公式HPより)
『あんぱん』くらばあ役を好演の浅田美代子、ドラマ『照子と瑠衣』W主演の風吹ジュン&夏木マリ…“カッコよくてかわいいおばあちゃん”の魅力
女性セブン
麻薬密売容疑でマグダレナ・サドロ被告(30)が逮捕された(「ラブ・アイランド」HPより)
ドバイ拠点・麻薬カルテルの美しすぎるブレイン“バービー”に有罪判決、総額103億円のコカイン密売事件「マトリックス作戦」の攻防《英国史上最大の麻薬事件》
NEWSポストセブン
宗教学者の島田裕巳氏(本人提供)
宗教学者・島田裕巳氏が皇位継承問題に提言「愛子天皇を“中継ぎ”として悠仁さまにつなぐ柔軟な考えも必要だ」国民の関心が高まる効果も
週刊ポスト
広島県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年6月、広島県。撮影/JMPA)
皇后雅子さま、広島ご訪問で見せたグレーのセットアップ 31年前の装いと共通する「祈りの品格」 
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一(50)。地元でもショックの声が──
《地元にも波紋》「デビュー前はそこの公園で不良仲間とよくだべってたよ」国分太一の知られざる “ヤンチャなTOKIO前夜” 同級生も落胆「アイツだけは不祥事起こさないと…」 【無期限活動停止を発表】
NEWSポストセブン
出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
《水原一平がついに収監》最愛の妻・Aさんが姿を消した…「両親を亡くし、家族は一平さんだけ」刑務所行きの夫を待ち受ける「囚人同士の性的嫌がらせ」
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一(右/時事通信フォトより)
《あだ名はジャニーズの風紀委員》無期限活動休止・国分太一の“イジリ系素顔”「しっかりしている分、怒ると“ネチネチ系”で…」 “セクハラに該当”との情報も
NEWSポストセブン
夫・井上康生の不倫報道から2年(左・HPより)
《柔道・井上康生の黒帯バスローブ不倫報道から2年》妻・東原亜希の選択した沈黙の「返し技」、夫は国際柔道連盟の新理事に就任の大出世
NEWSポストセブン