株価が上がるのはよいこと、景気が良い証拠であるとよく言われるが、本当だろうか? 経済学者で投資家でもある小幡績氏が、株価が上がることによって、本当は何が起きているのか、日本がバブル経済から立ち直るのになぜ時間がかかったのかについて解説する。
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アベノミクスを礼賛する人は、株価が上がったのが、景気が良いこと、経済政策が成功していることの何よりの証拠だと言います。
実際、株価は上昇し、今年4月には日経平均の終値が2000年4月以来の2万円超えとなりました。民主党政権時代(2012年11月)は8000円台を推移していたので、「アベノミクスで日本経済が良くなった」ことの最大の論拠になっています。
「株価が上がるのはいいこと」と当然のように感じますが、私たちに具体的に何かいいことがあるのでしょうか?
まず、モノやサービスの値段が上がり、一部の富裕層にしか手に入らないモノが出てきます。超高級車や超高級マンションが株長者に買い占められ、他の人には手に入らなくなります。
さらに、一般の人が買える「手頃な値段のモノ」がなくなってくるのです。どうしてでしょうか?
売り手の立場で考えるとよくわかります。売り手は儲けるために商売するので、儲かる相手に売れるモノだけを作る傾向が強くなるからです。1980年代のバブルの時には、フランス料理店はコースのみで一人5万円以上の客しか相手にせず、百貨店はハイブランドしか置かなくなりました。庶民が集う居酒屋も今のように2000円で飲み食いはできず、最低でも5000円は必要でした。
モノがすべて土地長者や大企業の社用需要、中小企業オーナー向けのバブル仕様となり、シンプルで安くて使いやすい車や家電製品などはなくなり、すべてが高級、あるいは多機能商品になってしまったのです。