スポーツ

衣笠祥雄氏の野球人生最大の危機を救った「心の一冊」とは

自らを救った一冊について語った衣笠祥雄氏

 広島東洋カープの黄金時代を牽引した元プロ野球選手で野球評論家の衣笠祥雄さん(68才)。衣笠さんが極度のスランプに陥った1979年に出会い、救われたという本が報国禅寺住職・菅原義道氏の著書『死んだつもりで』(日新報道)だ。「女性セブン」の大好評連載「いつも心にこの一冊を」に登場した衣笠さんが、現役を引退した今もなお大切にしている心の一冊について語った。(取材・文/柳川悠二)

 * * *
 中学1年生から野球一筋だったぼくは、プロ野球選手になってからも、ほとんど読書をしたことがなかったんです。野球人生とはわからないもので、ベテランになって陥った極度のスランプからぼくを救ってくれたのは『死んだつもりで』という一冊の本でした。この本との出会いがなければ2215試合という連続試合出場の世界記録の樹立(当時。現在は世界2位)も達成し得なかったかもしれません。

 あれは平安高校(現龍谷大平安)から広島東洋カープに入団して15年目、1979年のシーズンのこと。

 春のキャンプこそ調子がよかったものの、開幕直後からぼくは打撃不振で、5月27日の段階で打率が、1割9分8厘にまで落ち込みました。その日、700試合という連続フルイニング出場の日本記録にあと22試合と迫っていたぼくは、スタメンから外されることになったのです。

 ひたすら練習すれば野球が上手くなると思っていた若手時代を経て、1975年にリーグ優勝を経験、1976年には盗塁王を獲得しました。いつしか入団時の背番号「28」から、劇画『鉄人28号』に由来する「鉄人」の愛称で呼ばれるようになり、アスリートとして肉体的なピークを迎えたのもこの時期でした。

 また1979年は江夏豊が南海から広島に移籍してきて戦力が充実し、日本一をファンや首脳陣に期待、いや厳命されたシーズンでもありました。

 前年に30本塁打を放ち、ある程度、野球選手としては形が出来上がったと、自分では確信していました。ところが、あらゆる策を講じてみても調子が上向かず、ぼくのバットは振れども振れども当たらない。焦りが力みを生む悪循環に陥りました。フルイニング出場の日本記録更新の期待も高まっていましたが、ぼくにとって記録なんてどうでもよかった。当時の苦しみを、ぼくはよくこういう話にたとえます。

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン