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ハリウッドの日本人 チビで出っ歯で黒縁メガネから渡辺謙へ

 チビで出っ歯で黒縁メガネ。戦後のハリウッドにおける日本人男性は永らくそのように描かれてきた。『ティファニーで朝食を』の珍妙な日本人「ユニオシ」はその典型だろう。

 一方、日本人女性は「ゲイシャ」だった。戦後、日本に駐留したアメリカ軍人によって伝えられた芸者のイメージは、当時、理想的な恋愛相手として迎え入れられ、芸者と恋愛する映画も多く作られた。

 1970~1980年代になると、日本人の描かれ方が多様化する。

「数百年前の暗殺集団が現代も密かに存在している」といったミステリアスなファンタジーが大衆を魅了する。「ニンジャ」の登場だ。この頃から「日本は伝統と先端技術が融合した国」というイメージが定着するようになった。

 日米史研究家の村上由見子氏によれば「忍者や侍が今も人気があるのは、東洋は神秘的であってほしいというアメリカ人の願いの表れ」という。

(米国に進出した日本の自動車工場を描く)『ガン・ホー』では日本人ビジネスマンの所作、日本式経営は不可解な異文化とされていた。現在のトヨタに寄せられるような賞賛はまだない。

 以後も相撲や歌舞伎などをモチーフにした日本人が登場するが、徐々に神秘性や不可解さよりも、「遊び」のいちキャラクターとしての要素が強まるようになった。

 そして今、日本を代表するハリウッド俳優の筆頭は渡辺謙だろう。彼は有力な日本人権力者や経営者役などを多く演じている。

「渡辺謙は出っ歯でもチビでもない、これまでの日本人らしくないところが受けているのかもしれません。しかしこれによって、日本人が正当に見られるようになったかどうかまではわかりません。すべてハリウッドの求める日本人像でしかないのですから。

 また、1980年代の経済摩擦での『ジャパン・バッシング』、後の『ジャパン・パッシング』、そして今では『ジャパン・ナッシング』などと言われるように中国やその他のアジア諸国が日本より注目されるようになっていて、ハリウッドでもその傾向が強まっている側面もあります」(村上氏)

 今後、日本人はハリウッド映画でどのように描かれるのだろうか。

※SAPIO2015年9月号

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