スポーツ

4番打者を変えなかった工藤公康監督と8人も据えた原辰徳監督

 就任1年前の工藤公康監督と、昨年まで3連覇を含むリーグ優勝7回(日本一3回)、さらにWBCで世界制覇1回の名将・原辰徳監督。ともに圧倒的戦力を誇るチームを率いながら、工藤監督の福岡ソフトバンクホークスが歴史的圧勝でスピード優勝を決め、原監督の読売巨人軍が史上まれに見る混戦に沈んでいる。明暗の分かれた今シーズン、ここでは戦術面での両者の違いを検証してみたい。

 今季巨人が苦戦した最大の原因が貧打にあったことはいうまでもない。チーム打率.242で12球団最低の巨人に対して、ソフトバンク(以下SB)は.270でトップ(数字は9月21日現在。以下同)だから、その差は歴然だ。得点力の差が出た理由は何か。野球評論家の藤原満氏が語る。

「SBは4番を固定したことが大きい。工藤監督は内川(聖一)に4番を任せると決めると、シーズンを通して動かさず、8月に打率が.174と低迷するなど成績が悪くても使い続けた。これによって打線に軸ができました。

 一方の巨人は4番をコロコロと代え続けた。軸ができないと周りの選手にも影響が出る。打てないからとすぐに代えていては中心ができません。同じような巨大戦力を預かりながら、高い得点力を維持したSBと、夏場に失速した巨人を比べれば、どちらを評価すべきかは一目瞭然でしょう」

 智将・野村克也氏の言葉に、「中心なき組織は機能しない」というものがある。常勝チームになるためには中心となる4番打者・主将が重要なのだ。工藤監督はこれを証明するように、内川をチームの中心に仕立て、SBを勝利に導いた。SB担当記者が語る。

「開幕前、内川を4番で主将に任命したのは周囲からは賭けだといわれました。前任の秋山幸二監督は、当初内川をあまり評価していなかったからです。内川は弱小チームだった横浜時代の悪い癖が抜けておらず、自分の成績次第で気持ちに波が出るという欠点があった。

 工藤監督は、そんな内川をあえて4番・主将に指名することで責任感を持たせ、チームをまとめることに繋げました。今年の優勝決定の瞬間、重圧から解放され、内川が号泣していたのが印象的でした」

 一方、原監督の4番の扱いは軽かった。開幕前に「4番の理想」と語っていた選手をすぐ下位に落としたり、いきなり二軍から上がってきた選手が1日だけ座ったり。結果、今年だけで4番を打った選手は8人を数える。

 原監督は現役引退時、「巨人軍の4番打者は何人も侵すことが出来ない聖域である」と語っていたはずだが……。

※週刊ポスト2015年10月9日号

関連記事

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン