話を戻そう。「私の身体には赤ワインが流れている」は、聞き手がトレンドに精通していて大人の女性である坂上みきさんだったから生まれた言葉のように思う。松田聖子の「ビビビ婚」も、当時、TOKYO FMの人気DJだった高見恭子さんがインタビューをしていたとき、彼女が先に「ビビビ」というフレーズを出している。

 坂上さんも、ノースリーブの衣装で現れた川島なお美さんの二の腕を差して、あの名フレーズが出るようにもっていったように番組スタッフである私には見えていた。

 だが、収録後、「名フレーズの宝石箱のような川島なお美はタダモノじゃない」と坂上さん以下、スタッフ一同、おおいに盛り上がったのを覚えている。以来、なお美さんは、件のフレーズと共に「ワインと言えば川島なお美」というポジションを築いた。その後、スタッフには、『くれなゐ』と同名のワインが届けられた。彼女のサービス精神は、そういうところにも及んでいたのである。

 ワインと言えば、抱えていたワインを庇い、エスカレーターの最上段から下まで一気に落下。20針も縫う大怪我を負ったと報じられたこともあった。その際も「お裁縫の好きな先生で」と記者たちの笑いをとったなお美さんだ。

 鎧塚さんと結婚した際の数々のコメントも忘れられない。女友達から「9回の裏、逆転ホームラン」と言われたというなお美さんは、妥協、打算、惰性なしの「3Dなし」の結婚だとも表現。

「彼というグラスの中で熟成させていく」と、“ワインの女王”としてお嫁にいったこともスポーツ紙やワイドショーでは見出しやサイドスーパーとなった。

 長い芸能生活の中では、大学時代の“カンニング事件”でバッシングをされたり、彼女の前では“禁句”と言われていた『お笑いマンガ道場』(中京テレビ・日本テレビ系)出演の“過去”や、映画の『失楽園』でヒロインをつとめた黒木瞳との確執なども取りざたされた。

 でも、林真理子さんを介して、2011年9月には、エンジン01文化戦略会議の女性メンバーが『グレ』(東京・銀座)で一日ママを担当したチャリティー企画に、なお美さんも黒木さんも参加しているし、あるときから『お笑いマンガ道場』もNGではなくなった。

 それだけ、なお美さん自身が“熟成”されてきたということだろう。

 彼女の最後のブログ「動かなくなったエンジンを直しています」という文言は、もしかしたら、300人近くいる「エンジン01文化戦略会議」のメンバーへのメッセージだったのかもしれないと勝手に思っている私。

 あらゆるジャンルの文化人が所属する同団体の中で、なお美さんは本当にモテモテだったし、活動に彼女が居てくれるだけで、その場が一瞬にして華やいだし、どこでイベントをしても人々が群がるのは川島なお美さんの前だった。

「最後まで川島なお美だった」川島なお美さんの御主人だけあって、鎧塚寿彦さんは自宅駐車場に詰めかけたマスコミに対し、「あとでちゃんと話しますから」と言ってくださった。

 最期まで芸能マスコミに“貢献”した川島なお美さん。

 芸能ライターの一人として、バラエティー専門放送作家の一人として、エンジン01文化戦略会議の仲間として、私は決して貴女を忘れることはないでしょう。

 川島なお美さんの御冥福を心よりお祈り申し上げます。合掌

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