芸能

篠原涼子の『オトナ女子』 夢なき独身女性の共感得られるか

「数字を持っている」と評される女優が挑む話題作。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏がさっそく分析した。

 * * *
 2013年の『ラスト・シンデレラ』で喝采を浴びた篠原涼子が、2年半ぶりにドラマの主役に戻ってきた。『オトナ女子』(フジテレビ系木曜夜10時)の主人公・中原亜紀(篠原)は、アプリ開発の制作会社でバリバリ働く独身アラフォー。大崎萠子(吉瀬美智子)、バツイチで子持ちの坂田みどり(鈴木砂羽)と、女子会でつるんで励ましあったり愚痴ったりしながら、何とか幸せをゲットしようと挌闘する大人のラブストーリー。

 脇の男たちも半端ない布陣だ。斉藤工とのベットシーンに始まり、江口洋介、谷原章介と豪華な円熟キャストが登場。盤石なお膳だての上で、滑り出したオトナの恋愛ドラマ……と思いきや、どこか不思議な違和感が。それは既視感なのか、それとも仕掛けられたトラップなのか。

 とにかく、単なるラブコメでは済まない予感がする。胸がざわざわする理由とは何なのか? 3つの点をあげてみたい。

●過去のドラマのパロディを狙う?新境地

 母親を「かあちゃん」と呼ぶ息子。包丁を振り回す女。よっぱらいには見えない千鳥足。長い髪の毛をオーバーにかきあげる主人公。朝の電車で男のシャツに見知らぬ女の口紅がベトリ。偶然が重なりあって、この広い大東京の中で二人は再遭遇。

 なんというベタな展開。昭和の香りがたちのぼりる描写が満載だ。これは、「意図」した演出にしか見えない。

 ちょっと「ウザイ」ように、視聴者の気分を逆なでするように、ネットでつっこまれるように、細やかに逆「配慮した」演出にしか見えないのだ。

 それも、当然のことだろう。今どきのドラマは医療の闇、企業の不正、高齢化、セクハラ、シングルマザーの貧困と、社会問題に向き合う作品が多い。つまり、大きなテーマがくっきりと立っている。しかし、この『オトナ女子』のテーマは、「日常」ど真ん中。その意味で、他のドラマとは明快に差別化できている。

 恋愛以外に極端な事件は起きない。だから、ささやかなエピソードをいくつも重ねてつないでいくのだ。飽きられないよう多少刺激的に、つっこみ所も仕込んで、トレンディドラマのパロディも入れ、ディフォルメして、時には派手な立ち回りも。

 そうした仕掛け満載のドラマとして眺めると、また新鮮だ。『オトナ女子』は、今どきの社会問題寄りのドラマの潮流が生み出した、もう一つの形なのだ。

●ベテラン俳優たちの実人生が、ラブストーリーを邪魔する

『デザイナーベイビー』(NHK火曜午後10時)で主役を張る黒木メイサの妊婦刑事を、私は「成功事例」と書いた。実人生の経験を上手に活かしていたからだ。

 ではこのドラマはどうか?

 篠原涼子は、現実生活では二児の母。結婚相手も市村正親と有名人ゆえに、何かと私生活がクローズアップされる。そのイメージが時に邪魔をする。等身大のご本人のイメージが立ち上がってきて、「仕事がデキる独身キャリア」「年下ミュージシャンを甘えさせる年上女」に、見えてこない。視聴者を説得するためにはもう少し仕掛けか工夫が欲しいところ。

 江口洋介もそう。「シニカルな人気脚本家」というよりも、森高千里の良き夫で理想の有名人夫婦。そんな実人生のイメージが、どうしても浸み出してくる。谷原章介も、子だくさんのいいお父さんだとみんなが知っている。今回のプレイボーイのチャラい社長役としては、どこか上滑り。

 つまり、一人の人間として年を重ねてきたベテラン俳優たちを、ドラマの中でどう活かすのか、が問われている。もちろん、まったく別人格を演じるのは役者として当選のこと。演技や演出で、見ている人を説得してくれるのならば。反対に、実人生のイメージが少しでも浸み出してくれば、ファンタジーが膨らまないところか、しぼんでしまう。

 オトナ俳優が出揃った『オトナ女子』だけに、そのあたり今後の工夫に期待したい。

関連記事

トピックス

ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン