国内

大前研一氏 成長戦略で最も重要なのは容積率の緩和と指摘

東京の容積率は高くない

「規制緩和」という言葉は、これまで何度も叫ばれてきた。そのたびにほとんど意味のない規制緩和(と、役人の利権を守るための別の分野での規制強化)が繰り返され、結局、成長にはつながらなかった。だが、一気に日本経済を再浮上させる秘策がある。大前研一氏は「今こそ“土地ボーナス”を使うべきだ」と提言する。

 * * *
 日本が再び成長するにはどうすればよいのか? 即効性のある対策は、私が20年以上前から提言している「容積率の緩和」しかないと思う。ただし、この提言に対しては、なかなか政府関係者の理解が進まないので、今回は容積率の緩和が日本の成長戦略として最も重要な理由を改めて詳しく説明したい。

 まず論点を整理しよう。経済成長するためには、生産(富の創出)を増やさなければならない。生産の3要素は「労働力」「資本」「土地」である。

 しかし、少子化・高齢化が進んでいる日本は「人口ボーナス」(人口構成の変化が経済にプラスに作用する状態)がなくなるどころか、「人口オーナス」(人口構成の変化が経済にマイナスに作用する状態)になり、生産は海外に移転するしかなくなっている。労働力の要素では、成長余力がなくなっているわけだ。

 また、資本は高齢化社会の影響と大幅な金融緩和で、超過剰になっている。日本銀行の発表によると、個人金融資産残高は1708兆円に達し、過去最高を更新した(2015年3月末時点)。その過半は、ほとんど金利のつかない普通預金や定期預金などに眠っている。

 企業が利益を社内に貯めた内部留保も、過去最高の354兆円に膨らんだ。業績が好調な優良企業はキャッシュがダブつき、使い途がなくて困っている。3本の矢の1本目にあたる資本の要素も、成長にはつながっていないのだ。

 一方、土地については政府の理不尽な規制によって「土地ボーナス」が膨大に貯まっている。国が建蔽率(建物の敷地面積に対する建築面積の割合)と容積率(敷地面積に対する建物の延べ面積の割合)を勝手に決めているため、活用されていない土地が山ほどあるのだ。

 東京でさえ、道路や公園などを除く建物が建てられるエリアの平均使用容積率は23区内で136%、山手線の内側でも236%でしかない。23区内で平均1.3階建て、山手線の内側で同2.3階建てにすぎないのである。それに対して、面積が山手線の内側とほぼ同じパリの都心部は平均6階建てだ。

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