国内

7戸に1戸が空き家 空き家率が30%超えると町として成立せず

 総務省の「住宅・土地統計調査」(2013年)によれば、全国にある空き家は1958年から右肩上がりの約820万戸。空き家率は13.5%に達し、日本にある住宅の実に7戸に1戸が住人不在の空き家という計算だ。そんな中、「空家対策の推進に関する特別措置法」が適用され、神奈川県横須賀市では、全国初の取り壊しが10月26日に行われた。

 空き家は今後も増え続け、野村総研の試算では、25年後の2040年には空き家率が40%以上に達するという。これを受けてテレビ、新聞などでは「空き家問題」という言葉がよく聞かれる。

 空き家問題は現状どうなっているのだろうか。そして、将来的に空き家はどうなるのだろうか。空き家列島ニッポンの現在と未来を追った。

 そもそも、国の定める「空き家」とは、「居住していないことが常態化」した家のこと。 国のガイドラインでは、1年間誰も居住してないことや電気・水道の使用がないことなどが空き家の目安となる。

 前述のとおり、こうした空き家が全国で820万戸を超えるが、その半数はマンションやアパートなどの賃貸用物件で、借り手がおらず空き家になっているもの。より問題なのは、残り4割ほどの「その他」に分類される空き家だと住宅ジャーナリストの山本久美子さんが言う。

「『その他』には、“管理されていない空き家”が含まれます。こうした空き家は急速に老朽化が進み、倒壊する恐れがある。

 雑草や樹木が伸びて隣宅に侵入したり、ネズミが大量発生したり、臭気が発生するケースもあります。誰も住んでないからと敷地内に大量のゴミが捨てられたり、浮浪者や若者がたむろして犯罪の温床にもなります。

 さらに怖いのは、空き家の火事。木造住宅の密集地帯で火事があると、周辺に被害が拡大します。雪国なら、降雪により空き家が倒壊する危険もあります」

 実際、ある空き家では庭から伸びた枝木が電線に絡まってあわや火災になりそうになったり、庭が冷蔵庫やパソコンなどさまざまな不用品のゴミ捨て場と化したり、敷地内にヘビやハクビシンが住み着いたこともある。「ゴミ屋敷」ならば少なくとも住人にクレームをつけられるが、空き家では直接、苦情を言う相手がいない。近隣住民にとっては何とも困った話だ。

 このまま空き家が増えるとご近所だけでなく、町全体に深刻な影響を与える、と指摘するのは不動産コンサルタントの長嶋修さんだ。

「ドイツの研究によると、空き家率が30%を超えると人の住む町として成立しなくなります。人出や税収が減って、上下水道や電気供給など公共的なサービスの効率が悪くなり、治安が悪化して犯罪率が増えると予測されます」

 空き家の連鎖が近隣住民を不安にし、ついには町全体を蝕むというのだ。そんな「有害」な空き家がなぜ、野放しになっているのか。

『どうする? 親の家の空き家問題』(主婦の友社)の著者の大久保恭子さんは、「持ち主の意識の問題が大きい」と指摘する。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン