すでに財務省は自民党に「増税実施圧力」をかけている。自民党政調幹部が語る。
「来年の参院選を睨んで農業関係にはTPP(環太平洋経済連携協定)対策の補正予算を組み、財界には公約の法人税減税を行なわなければならない。国土強靱化の公共事業の上積みも必要だ。
しかし、財務省は『消費税を予定通り上げなければ、財源不足になるから予算をつけるのは難しくなります』と説明し、社会保障では医療費の診療報酬引き下げ、農水予算では水田の転作要求、文教予算では教員削減や大学予算削減など、各分野でとても飲めない予算カットを突きつけてきている。
財界や建設業界、農業団体への公約が反故にされ、医師会の診療報酬がカットされるようなことになれば、党内から選挙を戦えないと官邸への不満が噴き出すだろう」
予算を「人質」に取って地元や支持団体にバラ撒きたい与党議員たちを増税賛成へと切り崩し、政権を揺さぶるのはこの省の得意とする手法だ。
過去、民主党に政権交代した直後の09年末の予算編成でも、財務省は「財源がない」と同党の公約だった子ども手当を半額に値切り、一気に評価を落とす原因となった。民主党政権は、最後は消費税増税へと突き進んで自滅に追い込まれていった。
さらに財務省は今年10月に財政制度等審議会が提出した資料の中で、財政再建が進まない場合、増大する社会保障費を消費税でまかなうためには税率を「最高32%」まで上げなければならないという試算を公表し、安倍政権の増税先送りを牽制している。これも同省の得意な情報操作といっていい。
※週刊ポスト2015年12月11日号