もう一つの注目作は、『いつかティファニーで朝食を』(日本テレビ系土曜25時25分)。かつては同級生同士、今は社会人という4人のアラサー女性が主人公だ。「朝食」をきっかけに、恋愛や生き方、働き方、自分自身のあり方を見つめ直していくオムニバス。出演はトリンドル玲奈、森カンナ、新木優子、徳永えりという注目の若手たち。
「みんなはキラキラ輝いているのに、私は一人専業主婦」「仕事やめたい」「私、何やってるんだろう」「結婚なんて、本当に実現するのかなあ」
一人一人が心の中でつぶやき、静かに自分なりの戦いを続けている。朝の光と美味しい朝食の力によって、傷ついた心がもう一度再生されていく。その清々しさが、とてもいい。
もう一つ、力作を挙げるとすれば、オダギリジョー主演『おかしの家』(TBS系水曜午後11時53分)。駄菓子屋のばあちゃんと孫の物語は、まるで映画を見ているようだと各方面から絶賛されている。
過剰な刺激のない、ゆるやかな展開とシズル感、胸がきゅっとする瞬間。三つの深夜ドラマに共通している魅力だ。ゴールデンタイムのドラマが派手な筋立て、スリリングな犯人捜し、刺激的描写等で「浮き世を忘れさせてくれる」効能を持つのだとすれば……。
深夜ドラマは、その反対。「浮き世を忘れる」のではなく、浮き世の自分自身を「思い出す」。自分自身に思いを馳せる。「私の生き方はこれでいいのかな」「幸せって、何なのだろう」と。つまり「自分自身に返ってくる」ことこそ、深夜ドラマの際立った特徴であり、純文学的魅力であり、可能性なのだと思う。