田代被告に肉体関係を迫られた、金を騙し取られたという女性は複数存在している。私の周辺取材によれば、田代被告と肉体関係を持った事務所関係者女性は少なくとも5人以上。その中には彼が編集長を務めていたファッション雑誌の看板モデルで内縁の妻・E子(25)に相談した女性もいる。相談した女性は、彼らの夫婦関係を知らないまま田代被告との肉体関係をE子に相談していた。E子はそういった女性を排除したとも見られる。したがって、E子も複数の女性との関係を把握していたはずだ。
ところが同日、情状証人として法廷に現れたE子は、田代被告の事務所所属の女性との関係について検察に問われると「被害者を含め2人」を把握しているとのみ証言した。この人数は、私の周辺取材によって得た情報とも明らかに食い違っている。
田代被告とE子は、一部を除けば起訴事実を認めているが、二人とも事件を起こした原因が「本人の病気」と「仕事がうまくいっていなかった」ことであるとしている。
「以前、夫(田代)を連れて病院へ行った際、夫に『性嗜好障害』の疑いがあるといわれた。事件当時は夫の会社の経営状態が悪く、ストレスがあったのではないか」(妻のE子)
田代被告本人も自身が病気かもしれないという事、また8歳で来日して以降、父母がおらず祖父母に育てられ、祖父に虐待を受けていたことなどを述べると、証言台の上で泣き崩れたのだった。
性嗜好障害とは、いわゆるセックス依存症のこと。その病気と経営不振によるストレスが重なったことで罪を犯したと被告人とその妻は主張しているのだ。この主張については、呆れるほかない。セックス依存症だからといって性犯罪には直結しない。芸能プロダクション社長でありファッション誌編集長の男が犯したことは、自分より立場が弱い少女にパワーハラスメントとセクシャルハラスメントを強要した末の犯罪に他ならない。
裁判官は最後に、田代被告へこう告げている。
「今年あなたは38歳。20年以上の前の自分を思い出してください。当時、38歳と対等に話せると思いますか? また、タレントと事務所社長という立場で対等に話せますか? あなたはそういった被害者の心につけ込んでいる。被害者に悪い影響がなければいいが、結婚や出産などがあっても、あなたとの事は消えない」
この言葉は、田代被告の心に本当に届いたのか。というのも、事件後、目立った活動をしていなかった妻・E子が、11月にモデル活動を再開しているからだ。その活動の場は、かつて田代被告が編集長をつとめた雑誌の後継とみられるWEBサイト。田代被告と妻は、再犯しないために芸能関係の仕事はしない、若い女性との接触が少ない生活を送ると法廷で誓ったにも関わらず、以前と変わらぬ仕事へ復帰しようとしているようにもみえる。
裁判で検察求刑は2年、弁護側は執行猶予付きの判決求めているが、司法はどう判断を下すか。