例えば、香港の政治家や活動家は、『進撃の巨人』の巨人を巨悪=中国共産党に見立てたパロディ動画を作成し党指導部を猛批判。その動画を見た香港の人々は同作品に自身の置かれた状況を重ね合わせはじめている。
また、同じく規制対象となった『残響のテロル』のストーリーの中核は、若者による国家へのテロだ。同作品のキャッチコピーは「この世界に、引き金をひけ。」。少数民族問題を抱え暴動が頻発する中国で、作品に感化された若者が共産党にテロを起こすことを党指導部は懸念している。
さらに、徹底した監視社会を描く『PHYCHO-PASS サイコパス』を規制した背景には、中国の人民が監視社会に対する疑問を抱かないようにする狙いがある。体制批判や政情不安に繋がりかねない材料は、たとえアニメでも「徹底的に排除する」のが中国政府の方針なのだ。
【プロフィール】孫向文(そんこうぶん):中華人民共和国浙江省杭州市出身の31歳。漢族。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。現在「デイリーニュースオンライン」と「日刊サイゾー」でコラムを連載中。著書に『中国のヤバい正体』、『中国のもっとヤバい正体』(いずれも大洋図書刊)がある。
※SAPIO2016年1月号