見る人たちの選択がますます厳しくなる中で、ビジネスとして進化を遂げているのが、ライブビジネスやフェスといったイベントです。どうしてもお客さんを集めるキャパが決まっているイベントは入場料収入も頭打ちでした。そこでたどり着いたのが物販と飲食です。
最近の音楽ライブは、アーティストの演奏中に観客が振り回す“タオル曲”が用意されていたり、オリジナルのツアーTシャツやペンライトなどが売られていたりするのが一般的。それらのグッズを開演前に購入して一体感で盛り上がるのが正しい楽しみ方になっています。歌や演奏がカッコイイという要素ももちろんありますが、そのライブに参加すること自体が楽しい――と、いわば場を提供するイベントになっているのです。
これはスポーツ観戦の「応援」に近いといったほうがいいでしょう。9月に東京・お台場で開催され、3日間で9万人を動員したダンス音楽イベント「ウルトラジャパン2015」でも同じ光景が見られました。
企業の協賛ブースでは記念グッズや“フェス飯”が飛ぶように売れ、観客の派手なファッションにも注目が集まりました。中には大勢で揃いの法被姿を来たグループも。ここまでくると、よさこい祭り的な雰囲気を感じましたが……。いずれにせよ、「観客一人ひとりが主役」のイベントを企画すれば、人もおカネも集まってくることが分かりました。
消費を増やす方策として今年注目されたのは、なんといっても中国人の爆買いに代表されるインバウンド需要でしょう。
海外からの観光客、台湾や香港、タイといった国の人たちのリピーターも増え、これまで日本人も気付かなかったような場所やお店に外国人が群がり、モノが売れました。
富士山と五重塔が一望できる新倉山浅間公園(山梨県富士吉田市)や、アンデルセン公園(千葉県船橋市)などはその代表です。北陸新幹線の開業で石川や富山にも多くの外国人が押し寄せましたしね。いわば日本通の外国人による“日本再発見ブーム”が起きたのです。
アベノミクスやクールジャパン戦略が見え隠れし過ぎるのはどうかと思いますが、日本人が外国人の力も借りつつ、「日本って、こんなに良いところだったよね」ともっと視野を広げれば、地方創生のひとつのきっかけになるかもしれません。地方には面白いものや新しいコンテンツを生み出す素材がたくさん埋もれています。
成熟した社会、しかも価値観が多様化する中で多くの人を魅了することは容易ではありません。しかし、仮装で非日常を演出して市場規模を拡大させたハロウィーンブームのように、どこに商機が隠れているか分かりません。
さて、2016年はどんなヒット現象が飛び出すか、楽しみです。