芸能

『あさが来た』友近 芸人として培った観察眼が演技に直結

『あさが来た』での演技が光る友近

 好調が続く朝の連続テレビ小説『あさが来た』(NHK)。主人公・あさ(波瑠)を支える女中・うめを好演しているのが友近(42才)だ。お笑い芸人として変幻自在のキャラクターを見せる彼女は、朝ドラでも脇役として独特な存在感を発揮している。友近の演技力についてテレビ解説者の木村隆志さんが分析する。

 * * *
 このところ朝ドラでは、女性芸人の出演が定番化していましたが、友近さんは別格。うめが務める今井家の升毅さんと寺島しのぶさん、加野屋の近藤正臣さんと風吹ジュンさんなどの実力派俳優がそろう中、演技面で浮いてしまうことはありません。今や「脇役の1人」というより、「ヒロイン・あさとの名コンビ」というポジションの印象すらあるくらいです。

 たとえば、「なんでだす?」を繰り返し、大股で歩くあさを「おあさ様!」といさめるシーンは毎回絶妙。あさの奔放なキャラを引き立てるような芸人らしい間の取り方で、ほっこりとした笑いを生み出しています。

 その他のシーンで目立つのは、セリフの前後にひと呼吸入れるような、タメのある間合い。多くを語るのではなく、表情や仕草を軸にした演技で、「ときには母のように、ときには姉のようにあさを見守る」、うめの温かい人柄を表現しています。

 もともと友近さんは、視線の角度や手足の動きひとつで、感情表現できる演技力の持ち主。地元愛媛でのレポーター、旅館の仲居、通天閣のエレベーターガールなど、さまざまな経験で培った観察眼は、そのまま演技に直結し、感情を説明するようなセリフは必要ないのです。それまで一人コントの得意ネタだった「極道の妻」を、映画『地獄でなぜ悪い』で演じ切ったように、友近さんの芸はそのまま俳優業にも通用するのではないでしょうか。

 友近さんには2度インタビューしたことがありますが、ご本人は、外見や大声、ダジャレやお約束などで笑いを取るのが嫌いな“笑いの職人”。これまで時間をかけて自分が納得できる笑いを追求してきましたが、役作りでもその職人気質は変わりません。うめの役作りでは、「できるだけ存在感を薄めることで、陰からヒロインを支える姿を表現しよう」というスタンスが見えます。

 友近さんはバラエティー番組を見れば分かる通り、前へ出てしゃべり倒す派手な芸人ではなく、ボソッとひと言で笑わせる地味なタイプ。そもそも27歳で養成所に入り、30代に入ってブレイクした遅咲きだけに、「ヒロインに生涯を捧げ、恋心をそっと忍ぶ」、幸薄いうめの役がとても似合っています。

 物語は、亀助とふゆが結婚し、「次は、うめと雁助が結婚か?」という流れになりつつあります。これまでは、あさの背景になるような立ち位置を取ることで、うめの実直なキャラを表現していましたが、恋の結末を写すシーンでは画面の中央で存在感たっぷりの姿を見せてくれるでしょう。

【木村隆志】
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』(TAC出版)など。

関連記事

トピックス

〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン