さらにKAFCのホームページでは、州教育局への陳情を呼びかけ、次のような文面の署名フォーマットを公開。
「私は、現在改訂作業が進められている10年生用(日本の高校生に相当)の歴史教科書に『慰安婦』を付け加えることを支持します……40万人の女性と児童が被害にあったという事実に照らし、そして今なお日本政府がこの問題で全責任を受け入れることを要求している元慰安婦生存者がいるという現実に鑑み、カリフォルニア州教育局が人類の歴史にとって重要な慰安婦問題を私たちの歴史教科書に書き加えることを要請致します」
教育局関係者の話によると、今年に入り同じ文面のメールが殺到しているという。日本政府や現地日本人はどう対応しているのか。米グレンデールで慰安婦像撤去訴訟を起こしている目良浩一氏はこう語る。
「日韓合意にもかかわらず、在米韓国人は『慰安婦』教科書問題に全力を挙げている。意見公募締め切りの2月末に向け、出来るだけ多くの日本人が事実誤認を指摘するメールをカリフォルニア州教育局(HSSframework@cde.ca.gov)宛に出すよう呼びかけている。我々だけでは限界があるので、日本からの応援、たとえば学校で歴史を教える教師たちの協力を期待したい」
ロサンゼルス総領事館に筆者がコメントを求めると、外務省国内広報室から「諸外国において…出身国間の意見の違いが持ち込まれることは適切ではないと考えて」おり、「客観的事実に基づく正しい歴史認識が形成されるよう、日本の基本的立場や取組について、これまで以上に対外発信を強化していく方針」との回答があった。
日本政府が真剣に対応しない限り、慰安婦問題にとって決定的出来事だった「クマラスワミ報告」(1996年)、「米下院121号決議」(2007年)と同じ外交上の失敗(*2)を繰り返すことになる。今回のカリフォルニア州公立高校教科書問題はこれらに匹敵する一大事のはずである。外交官が動かないなら、国会議員が現在会期中の国会で問題提起すべきではないだろうか。
【*2:日本政府は1996年に国連人権委員会(当時)に提出された「クマラスワミ報告」への反論文書を提出したがすぐに撤回。2007年の米下院決議では事態を静観した。いずれのケースも、「慰安婦=強制連行された性奴隷」という誤った認識が世界に広まる要因となった】
※SAPIO2016年3月号