加藤:韓国では妊娠中や高齢など特別な理由がない場合、判決は立って聞くことになっているそうです。が、一般的に判決言い渡しは数秒から数十分程度。3時間は異例でした。1時間40分ほど経ったところで弁護士が裁判長に「被告人を着席させてもいいか」と聞きましたが、認められませんでした。裁判長は、初公判の際に「この裁判はルール通りやる」と宣言していました。きっと、あとで「ルールにのっとっていない」と文句を付けられるのを避けたいという狙いなのでしょう。
判決が長くなったのは理由がありました。裁判長が読み上げた判決文の中身の85%くらいが「産経新聞の報道はひどい」「加藤という記者はろくに取材をしていない」という罵詈讒謗なんです。そして最後の最後で「韓国国民としては受け入れがたいが、日本の読者に向けて韓国の政治、社会状況を伝えた記事なのは明らかだから、罪には問えない」と結論にやっといたる。
井沢:終わりの1割くらいの結論だけで十分だけど、最初の85%を省くと「親日派の裁判長だ」と非難されてしまうから、もったいぶった判決を下したわけですね。
加藤:韓国メディアの報道も判決と一緒で「産経新聞の加藤はとんでもない記者だが」とたくさん前置きを書いてから「検察は国際社会に恥をさらした」と国を批判していました。それが韓国文化の「黄金比」なのかもしれませんね。
【PROFILE】いざわ・もとひこ●1954年生まれ。週刊ポストで『逆説の日本史』を連載中。2月5日、『逆説の日本史 別巻5 英雄と歴史の道』(小学館文庫)が発売。
【PROFILE】かとう・たつや●1966年生まれ。1991年産経新聞東京本社入社。社会部、外信部などを経て、2010年からソウル特派員。2011年、ソウル支局長。現在は社会部編集委員。裁判の経験を綴った『なぜ私は韓国に勝てたか』(産経新聞出版)が発売中。
※SAPIO2016年3月号