■緑内障
「緑内障には一晩で失明してしまう急性緑内障と、気がつかないうちに失明してしまう慢性緑内障があり、全く別の機序で起こります。遠視のお年寄りに多く起こるのが急性です。眼の中を満たしている房水という水は一定の量が作られ、最終的に眼内の水のはけ口から出ていきます。この作る量とはける量のバランスによって、眼圧(=眼のかたさ)が保たれています。
まず、遠視の人は眼球が小さいため、水のはけ口も狭く水が流れ出にくくなっています。お年寄りや目をこすりすぎてレンズを吊っているチン小帯が弱くなっている人、白内障でレンズが大きくなっている人が、暗い所で下向きで作業をしていると、瞳が開き重力でレンズが前方に押し出され、水のはけ口が突然閉じた状態になる。すると正常で10~20mmHgの眼圧が、50~60mmHg以上に一気に上がり、視神経がやられて一晩で失明してしまうのです。眼圧の急上昇によって、ものすごい頭痛と嘔吐とで、眼の病気と思わずに脳外科へ行く人も多く、頭の検査をしているうちに、翌日になったら失明していたということも。
慢性緑内障は、一般的に目が大きい近視の人に起こります。若い人にも起こります。水のはけ口にはフィルターの様な構造があるのですが、そこが目詰まりを起こすと常時30~40mmHg程度の眼圧が長期間続きます。軽い疲れ目の症状以外、まったく自覚症状はありません。近視が強いと、光を感じる網膜がひき伸ばされて薄くなっているため、通常であれば耐えられる程度の眼圧でも、神経が少しずつやられて周辺部から視野が欠けて見えなくなっていくのです。
慢性タイプの恐ろしい所は、症状がなく、また眼や顔を動かせば、どんなに視野が狭くてもどこでも見えるので、患者さんはまったく異常に気付かないことです。視力も失明直前まで全然落ちません。気づいた時には既に手遅れで、死んでしまった視神経は元に戻すことはできません。今日、日本の失明原因のNo.1は緑内障です。恐ろしいことに、眼圧は正常範囲にある正常眼圧緑内障の人も増えています。これは集団検診などで行われる眼圧測定では見つけられません。統計的には40才以上の17人に1人の頻度と言われています。早期治療をすれば失明は避けられる病気ですから、眼圧と視野と眼底の状態、この3つの検査をして、早めに気づくことが大事です」
「目の仕組み」図版作成:さくら工芸社