ビジネス

3戸に1戸の空き家危機 「負のスパイラル」の出口見えない

深刻度合いを増す「空き家」問題 (ゆふこ/PIXTA)

 首都圏や都市部を中心に新築マンションの分譲価格が過去最高を更新し、不動産の“局所的バブル”は過熱する一方だが、日本全国に目を向けると「住宅余り」の現実、すなわち「空き家」問題が深刻度合いを増している。

 2014年に発表された総務省の数字(住宅・土地統計調査)は、受給バランスの崩れた日本の住宅事情を表している。

 戸建て・集合住宅を含めた日本の空き家は全国に820万戸あり、「空き家率」は13.5%。およそ7.4戸に1戸が空き家になっているという衝撃的なデータだ。東京でさえ約11%の空き家があることから、過疎地だけの問題ではないことも浮き彫りになった。

 にもかかわらず、毎年の新築住宅は80~100万戸の間で着工され続けている。さらなる少子高齢化や人口減少が避けられない状況下で、このままいけば日本中が“廃墟だらけ”になっても不思議はない。2033年に日本の空き家は2000万戸を超え、3戸に1戸が不在状態になる、との恐ろしい予測(野村総合研究所)もある。

 空き家が増え続けるとどうなるのか――。住宅ジャーナリストの山下和之氏は、こんな最悪の事態を想定する。

「放火などの火災、老朽化による倒壊、不法侵入など犯罪の温床化、周辺イメージや景観の悪化など、さまざまな問題が起きる可能性があります。

 空き家になっているのは、ほとんどが住宅品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)のない時代や、新耐震基準以前に建てられた築年数30年以上の住宅で、建物の構造や設備面などの基本性能が極めて低い。また、立地面でも生活しにくい、通勤・通学に不便といった阻害要因が多い物件が中心です」

 では、使いものにならない空き家がいつまでも解体・処分されずに放置してあるのはなぜか。

「解体して更地にすると固定資産税が6倍になることもありますし、そもそも相続問題から管理者があいまいになっている物件も数多く見られます。そうした物件は管理されないまま一層老朽化が進み、資産価値がゼロになる。むしろ解体費を考えるとマイナスの資産になるため、負のスパイラルに陥っているのです」(前出・山下氏)

 国交省もこうした惨状を見兼ねて、中古住宅をリフォームしやすくする補助金・税制の導入や、集合住宅の建て替え条件を緩和させるなどの法整備を検討、空き家増加を食い止めようと動き出した。

 また、空き家の戸建て住宅や民間アパートを“準公営住宅”に指定し、生活費負担の大きい子育て世帯や、低所得・年金暮らしなどの高齢者に相場より安く貸し出す新制度も考案中だという。今後、有識者会議を重ね、関連法案の国会提出を目指す。

関連キーワード

関連記事

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン