ビジネス

自動運転車 そう簡単に実現しないこれだけの理由

手放し運転技術の開発競争は進むが…(freehands/PIXTA)

 人間がハンドルを握らなくても、コンピュータが人混みの市街地を巧みに運転し、時に高速道路を疾走して遠方の目的地まで運んでくれる――。そんな「自動運転車」の開発が、日進月歩で進んでいる。

 だが、近い将来、運転手不要のクルマが当たり前のように普及する時代が本当にやってくるのか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏は、懐疑的な見方をする。

 * * *
 自動車の世界で近年、開発競争が激化している“自動運転技術”。日本でも昨年、自動運転に前がかりになっている日産自動車が高速道路、一般道の両方を自動で走るための公道実験を開始。今年1月にはアメリカのEVベンチャー、テスラ・モーターズの「モデルS」にオプション設定されるセミ自動運転機能「オートパイロット」の使用ができるようになった。

 安倍政権は2020年の東京オリンピックまでに自動運転の実用化のみならず、普及もさせると息巻く。

 気の早いメディアの中には、運転免許がいらなくなる、手動運転車は10年もしないうちになくなる、果てはドライバー不要の時代が来るといったセンセーショナルな論調の記事を掲載するところも出てきている。が、本当に自動運転車が走り回る日がそんなに早くやってくるのだろうか。

「もちろん自動運転の技術は重要だし、ウチも昔から継続的に研究してきました。また、本当に完全自動運転が実現できれば、一定のニーズもあると思う。しかし、今の自動運転ブームは完全にムードが先行してしまっていると思います。

 コンピューティングの世界で機械学習(コンピュータが自分で経験を積み、知見や予見を得る技術)がクローズアップされるにつれて、人工知能(AI)が人間を支配するなどというSFまがいの話がもてはやされているのと似ています」

 昨年、新たにAI研究のためのラボラトリー、トヨタリサーチインスティチュートを設立するなど、クルマの知能化のための基盤技術強化を加速させているトヨタ自動車のAI研究者の一人は、自動運転の意義は認めながらも、今のブームは過熱ぎみだという見方を示す。

 この研究者が引き合いに出した機械学習が長足の進歩を遂げていることは、クルマの運転を自動化させたほうがいいという風潮に拍車をかけている。

 先日もGoogle傘下のラボラトリーが開発した囲碁ソフト「アルファ碁」が韓国のトッププロを打ち負かし、世界ランキング2位になった。この“学ぶコンピュータ”が小型・高性能化すれば、ハンドルのない自動運転車の公道実験で脚光を浴びたGoogleが主張する通り、もはやクルマの運転で人間の出る幕はなくなるのか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン