国内

ヤクザの源流は室町時代のカブキ者 明治期に近代の原型誕生

 今日、ヤクザは暴力を背景にした反社会的集団とみなされている。しかし、かつては体制側が権力を移譲し、その“力”を利用した歴史があった。ヤクザの親分を父に持つ作家・宮崎学氏が日本のヤクザの歴史について解説する。

 * * *
 現在では強固な組織的な基盤を持っているように見えるヤクザだが、歴史的に見ればそれはごく最近に限ってのこと。そもそもヤクザは社会に適合できない人たちが生きんがために自然発生的に集まり、その時代背景に合った形で集団を形成したものに過ぎない。昔から継承され、万世一系で今に至ったというわけでは、もちろんない。

 歴史上、ヤクザの源流と考えられるのは、室町時代から戦国末期に生まれたカブキ者である。カブキ者は、下剋上の時代に成り上がろうとした下級武士群のリーダーだった。彼らは数十人の足軽を率いて、雇い主の武将と契約交渉をしたり、集団内のトラブルの調整役を担ったりした。

 江戸時代になって戦乱がなくなると、幕府によって取り締まられ、「市井のならず者」に転落を余儀なくされていく。彼らカブキ者が一掃されて30~40年経つと、旗本奴や町奴という集団が登場する。

 旗本奴はカブキ者の堕落形態で体制側の無頼集団。それに対抗するカウンターパワーとして生まれたのが町奴である。

 町奴の指導者は失業武士が担っており、元になった集団は人足(力仕事に従事する労働者)の口入業に従事していた。いわば労働者派遣業の近世版といったところか。徳川幕府による大名の廃絶や減封という“行政改革”、泰平の世になったことによる藩の“リストラ”によって失業した武士の受け皿になったのが町奴であった。

 彼らは支配階級に対する反抗を旨とし、暴力装置を独占していた武士を模倣して、武士の実力が直接及ばないような領域、すなわち町人自治の領域を担った。しかし、これも幕府による度重なる「奴狩り」に遭って衰退、解体されてしまう。

 そのあと登場したのが、町火消しである。江戸中期以降の火消しは、武家火消しと町火消しに分かれており、前者が支配階級の特権意識を持った集団だったのに対し、後者は市民兵的自衛意識を持っていた。町火消しは町奴の精神を受け継ぎながら、武家火消しと対抗したのだ。

関連記事

トピックス

自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
連敗中でも大谷翔平は4試合連続本塁打を放つなど打撃好調だが…(時事通信フォト)
大谷翔平が4試合連続HRもロバーツ監督が辛辣コメントの理由 ドジャース「地区2位転落」で補強敢行のパドレスと厳しい争いのなか「ここで手綱を締めたい狙い」との指摘
NEWSポストセブン
伊豆急下田駅に到着された両陛下と愛子さま(時事通信フォト)
《しゃがめってマジで!》“撮り鉄”たちが天皇皇后両陛下のお召し列車に殺到…駅構内は厳戒態勢に JR東日本「トラブルや混乱が発生したとの情報はありません」
NEWSポストセブン
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《早穂夫人は広島への想いを投稿》前田健太投手、マイナー移籍にともない妻が現地視察「なかなか来ない場所なので」…夫婦がSNSで匂わせた「古巣への想い」
NEWSポストセブン
2023年ドラフト1位で広島に入団した常廣羽也斗(時事通信)
《1単位とれずに痛恨の再留年》広島カープ・常廣羽也斗投手、現在も青山学院大学に在学中…球団も事実認める「本人にとっては重要なキャリア」とコメント
NEWSポストセブン
芸能生活20周年を迎えたタレントの鈴木あきえさん
《チア時代に甲子園アルプス席で母校を応援》鈴木あきえ、芸能生活21年で“1度だけ引退を考えた過去”「グラビア撮影のたびに水着の面積がちっちゃくなって…」
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
【追悼】釜本邦茂さんが語っていた“母への感謝” 「陸上の五輪候補選手だった母がサッカーを続けさせてくれた」
週刊ポスト
有田哲平がMCを務める『世界で一番怖い答え』(番組公式HPより)
《昭和には“夏の風物詩”》令和の今、テレビで“怖い話”が再燃する背景 ネットの怪談ブームが追い風か 
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンにウジ虫混入騒動》体重減少、誹謗中傷、害虫対策の徹底…誠実な店主が吐露する営業再開までの苦難の40日間「『頑張ってね』という言葉すら怖く感じた」
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
【「便器なめろ」の暴言も】広陵「暴力問題」で被害生徒の父が初告白「求めるのは中井監督と堀校長の謝罪、再発防止策」 監督の「対外試合がなくなってもいいんか?」発言を否定しない学校側報告書の存在も 広陵は「そうしたやりとりはなかった」と回答
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《過激すぎる》イギリス公共放送が制作した金髪美女インフルエンサー(26)の密着番組、スポンサーが異例の抗議「自社製品と関連づけられたくない」 
NEWSポストセブン
悠仁さまに関心を寄せるのは日本人だけではない(時事通信フォト)
〈悠仁親王の直接の先輩が質問に何でも答えます!〉中国SNSに現れた“筑波大の先輩”名乗る中国人留学生が「投稿全削除」のワケ《中国で炎上》
週刊ポスト