国内

「清原被告から焼肉弁当、もしあなたなら」 記者たちの弁

取材相手からの弁当を食べる?

 覚醒剤の所持と使用容疑で逮捕起訴され、現在保釈中で入院している元プロ野球清原和博被告が、病院を取り囲む報道陣に差し入れた焼肉弁当が話題になった。原則的には取材相手から食事の提供などを受ける「供応」は、この世界では御法度だ。今回もそれに当たるのか。メディアに従事する記者たちに聞いた(取材・文=フリーライター・神田憲行)

 * * *
 差し入れられた焼肉弁当は約30個で、スポーツニッポン紙の記者が食べてレポート記事を書いた以外は、ほとんどの記者が手を付けなかった。その後3月23日の東京スポーツ紙の報道によると、この弁当は清原本人ではなく知人の手配だったという。バカバカしいイタズラだったわけたが、「取材対象からの供応」を考えるきっかけだと思う。

 そこでメディアに携わる友人たちに、「清原本人からの差し入れ」という前提で、焼肉弁当を食べるか食べないか、理由も訊ねてみた。取材対象者から供応は受けない、というのが記者の大原則である。今回もそれが適用するのか。

 結果はすぱっときれいに別れて、新聞社など組織ジャーナリズムに属する人たちのほとんどが「食べない」というもので、私のようにフリーランスで働くほとんどが「食べる」というものだった。

「食べない」派の典型的意見が、この60代男性全国紙記者の意見だ。

「その場にいたら食べないと思います。新聞記者になりたての頃、一年上の先輩が、カツ丼ひとつでも取材先におごられたらおごり返すこと、と教えられたからです。新人記者に言われたことは不思議なくらいよく覚えていて、励行する癖がある。ただ、雑誌記者だったら、食べた味を記事にしようとするかもしれない。あらゆることをネタにする、それもありだと思うから。それでもお金は置いてくるのではと思う」

 他にも、こうした声が聞かれた。

「おそらく食べない(受け取らない)。貸し借りはつくらない、と言われてきたし、自分もそうすべきだと思うので」(50代全国紙男性記者)

「食べませんね。取材対象者との関係の中で、奢られるのは困りますから。といっても、仲良くなった人と個人的に飲みに行くときには奢ってもらったこともありますが。もちろん、取材上の関係が終わった後のことです」(30代全国紙女性記者)

「興味はあるけど、やっぱり食べられません。どうしても食べる必要があるなら、清原本人に弁当代を支払うか(受け取りは拒まれると思いますが)、それが受け取られた場合か、同じ弁当を自分で購入するべき。きれいごとかもしれませんが、刑事被告人から供応を受けるのは、許される社会儀礼の範囲を越えています」(40代ブロック紙記者)

「食べませんが、蓋を開けて中身は見ます。食べない理由は、負の側面を取材している対象からの差し入れに手をつけるわけにはいかないということです。蓋を開ける理由は、好奇心です。清原からの差し入れだとして、どんなものを差し入れてきたのか。その弁当から、彼の媚びなのか虚栄心なのか優しさなのかが伝わってくるかもしれないので」(40代経済誌男性編集者)

「食べない。記者は貸し借りなしの状態で取材するからこそ記事に信頼性が担保されると考えるためで、今回弁当を食べることは『貸し』が生じてしまうため」(30代全国紙男性記者)

「自分は食べません。取材対象が、刑事事件の被告となれば買収を疑われるような行動は厳に慎むべきだと考えます。清原被告をヒーローに祭り上げてきたのは、ほかでもないマスコミです。彼がスターに駆け上がり、また転落していった一連の流れの中には、ある意味マスコミとの共犯関係があったのではないかと自戒すべきだと思います。もっとも、弁当を食べて伝えるのも、その記者や所属するメディアの切り口であり、その記者個人を責めようとは思いません」(40代全国紙男性記者)

 自分は食べなくても、食べる人を批判はしないという人が多い中で、40代スポーツ紙デスクはこう憤る。

「食べない。取材対象に借りは作らない。作ると筆が鈍る。例えば食事をごちそうになったら、同額の贈り物をしています。その辺はしっかり線引きしています。『スポニチ』の記者が食べたことで、スポーツ紙記者がみんなクレクレ体質と思われるのが心外です。『スポニチ』の罪は大きい」

 また20代男性のテレビ局ディレクターも、

「食べない。少しでも相手に借りや弱みを作ると、本気で取材できないためです。批判はしませんが、食べる方たちは取材者との距離感を意識できていない方なんだなと思ってしまいます」

 と、なかなか手厳しい。

トピックス

麻薬取締法違反容疑で家宅捜査を受けた米倉涼子
「8月が終わる…」米倉涼子が家宅捜索後に公式SNSで限定公開していたファンへの“ラストメッセージ”《FC会員が証言》
NEWSポストセブン
巨人を引退した長野久義、妻でテレビ朝日アナウンサーの下平さやか(左・時事通信フォト)
《結婚10年目に引退》巨人・長野久義、12歳年上妻のテレ朝・下平さやかアナが明かしていた夫への“不満” 「写真を断られて」
NEWSポストセブン
人気格闘技イベント「Breaking Down」に出場した格闘家のキム・ジェフン容疑者(35)が関税法違反などの疑いで逮捕、送検されていた(本人SNSより)
《3.5キロの“金メダル”密輸》全身タトゥーの巨漢…“元ヤクザ格闘家”キムジェフン容疑者の意外な素顔、犯行2か月前には〈娘のために一生懸命生きないと〉投稿も
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
ハワイ島の高級住宅開発を巡る訴訟で提訴された大谷翔平(時事通信フォト)
《テレビをつけたら大谷翔平》年間150億円…高騰し続ける大谷のCMスポンサー料、国内外で狙われる「真美子さんCM出演」の現実度
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン