緑ケ丘中学校の生徒がたまり場にしているという公園には、雄一くんの同級生がいた。4人とも地べたに座り、手にはスマホ。互いの目を合わせることはほとんどない。
声をかけると、「先生に話すなって言われてるから無理やわ」と冷たいひと言。こうも子供は管理されるものかと思っていると、そのうちの1人から、「大人は信用できん。邪魔なんで、あっちへ行ってくれない?」と、手で追い払われた。
ところが記者が、「なんで雄一くんは死んじゃったんだろうね…」と呟いたとき、彼らの表情も口調もガラリと変わった。
「大人は、“そんなことぐらいで死んで”って言うけど、それはそっちがいろいろ経験しているからじゃろ。大人にしたら高校受験なんてたいしたことないって思うかもしれないけど、おれたち15年の人生では大きな試練なんよ。大人は“どこの高校へ行くかによって今後の人生が決まる”って言うくせに、死んだら“それぐらいで死んで意味わからん”っておかしいわ」(3年生の時のクラスメートの男子)
教育評論家の尾木直樹さんは、こう憤る。
「今回の場合、まともなところが一か所もありません。そもそも進路指導とはどこの学校を受験させるか、ではなく、その先のキャリアを見据えて指導することです。あの学校で行われていたのは、進路指導ではなく進学指導にすぎません。でも、それすらもできていなかった。
報告書を見ても、○○できていない、××はなかった、という言葉ばかり。校長先生もリーダーシップを発揮できていないし、教頭も学年主任も進路指導主任も機能していません。“ないないづくし”の学校です。報告書も、少年が亡くなってしまった今、真実かどうかはわかりません。都合のいいように言っている可能性もあって怪しい。自殺後すぐに第三者委員会を立ち上げていなかったんですから」
学校側は、“他の指導に追われて進路指導に遅れが出ていた”“校内暴力の対応に追われていた”と説明している。前出の3年生の時のクラスメートは、まさに学校に対してやり場のない思いを持っていた。
「おれたちの学年=問題の学年、って思っている先生もいたと思うわ。じゃけぇ、生徒1人ひとりを見てくれんで、何を言っても聞いてくれない先生もおった」
問題となった万引き事件の翌日、1年生による暴力行為があり、生徒指導部はこちらの対応を優先して、万引きの対応や指導を怠ったとされている。その後、万引きをしたと入力された雄一くんは人違いだったと会議で気づくが、管理職不在のため修正を行う指示もなかった。そして、5回も進路指導した担任教師は、雄一くんと直接会話をしても、誤りを見抜けなかった。