芸能

ゆとりモンスター役で注目の太賀 「主役を食う」熱演

ゆとりモンスターを熱演する太賀(番組公式HPより)

 話題のドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)に出演中の太賀(23才)が、圧巻の演技とツイッターなどでも話題になっている。宮藤官九郎脚本で、岡田将生、柳楽優弥、松坂桃李、安藤サクラら演技派の俳優揃いの中にあって、異彩を放つ太賀の演技への注目度はグングン上昇中だ。テレビ解説者の木村隆志さんが彼の魅力を解説する。

 * * *
 これほど不快感を醸し出すキャラクターは、『半沢直樹』(TBS系)の“机バンバン”こと小木曽次長(緋田康人)以来でしょうか。それほど“ゆとりモンスター”山岸ひろむを演じる太賀さんの存在感は際立っています。

 1話のドラマ開始わずか1分で登場した太賀さんは、いきなりフルスロットル。取引先回りの営業に遅刻したあげく、「駅からタクっちゃいました」。取引先へのあいさつで、「本当はマーケティング志望なんですけど、まあ営業で」。会社の上司に、「自分、泥仕事したくないんで。用もないのに得意先回りなんて」。飲み会の誘いに、「それって強制すか?ダルいんすよね」と人を食ったような演技を連発しました。

 その後も、説教中にFacebookを更新し、仕事の受注ミスも「やっちゃいました。早めに気づいてよかったです」と開き直る始末。激怒した上司の坂間正和(岡田将生)に、深々と頭を下げて反省したと思ったら、翌朝LINEで「会社辞めまーすwww」「あんな上司と働いてたらマジ死ぬ」と宣言して度肝を抜きました。

 2話以降も、坂間をパワハラで訴えた上に、「まず謝れよオッサン!土下座しろよ」と罵声を浴びせながら「ネットに上げるぞ」とスマートフォンで撮影。「裁判しましょうよ!」と凄んだと思ったら、一転して机に頭をつけて、「以前の発言は感情的になってしまい……」と消えそうな声で謝罪。坂間が店長を務める焼き鳥店へ閉店間際に来て、接客にダメ出し。翌日に謝ったと思ったら、すぐにまた毒づくなど、表情筋をフル活用して情緒不安定なキャラを演じています。

 4話の終盤では、自殺で亡くなった同年代男性の遺影を前に、深く反省する表情を見せましたが、今後は改心するのか、それとも再びモンスターになるのか。インパクトという点では、岡田将生さん、松坂桃李さん、柳楽優弥さんのイケメン主演トリオを食っていると言っても過言ではないでしょう。

 太賀さんがイケメン主演を食うのは今回だけではありません。昨年の『恋仲』(フジテレビ系)でも、主人公たちの同級生で、お調子者でお人好しの金沢公平を伸び伸びと演じて、福士蒼汰さんと野村周平さんよりも目立つシーンが何度もありました。

 ただ、太賀さんのことを知る業界関係者は、これらの活躍を当然のことと思っています。太賀さんは中学生のころから演技経験を重ね、大河ドラマに4度出演するなど、23才にして出演作品100本に迫る実力派。多くの作品に出演しているのに知名度が高くないのは、変幻自在の表現力があり、視聴者に「別人」という印象を与えているからでしょう。

 ヘタレからコワモテまで、内気から陽気まで、「制作側の意図に沿いながら、思い切った役作りができる」のが太賀さんの強み。まだ出演のほとんどが脇役ながら、一部で「華の1993年組」と言われる、福士蒼汰さん、野村周平さん、菅田将暉さん、神木隆之介さん、間宮祥太朗さんら、同年生まれのスター俳優たちも一目置く存在なのです。

 そして、太賀さんを語る上で忘れてはいけないのは、父親である中野英雄さんの存在。1992年の大ヒットドラマ『愛のいう名のもとに』(フジテレビ系)で、パワハラ(当時その言葉はなかった)によって自殺に追い込まれるチョロを演じて、日本中を騒然とさせた名バイプレーヤーです。

 しかし、太賀さんは、「父親に関するトークは一切せず、演技のみで勝負する」というスタンスを貫いています。その骨太な姿勢こそ、まさに父親譲りなのですが、今回は中野英雄さんがTwitterやInstagramでドラマをPRするという、ほほえましい一幕も見られました。親子関係をオープンにしつつあるだけに、今後は共演も期待できそうです。

 ちなみに、中野英雄さんがチョロとして上司のパワハラに苦しんで自殺したシーンの1年後に、太賀さんが誕生。そして現在、成長した太賀さんが演じる山岸は、上司をパワハラで訴えようとしました。つまり太賀さんは、父親が演じた過去の役と、自分が演じる現在の役を通して、社会背景の変化を体現しているのです。

 いつか、同年生まれの主演俳優たちを助演に従えて、ど真ん中で主演を務めるのではないか。身長168cmの小さな体に宿る、大きな可能性に期待しています。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

関連記事

トピックス

レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
フリー転身を発表した遠野なぎこ(本人instagramより)
《訃報》「生きづらさ感じる人に寄り添う」遠野なぎこさんが逝去、フリー転向で語っていた“病のリアルを伝えたい”真摯な思い
NEWSポストセブン
なぜ蓮舫氏は東京から再出馬しなかったのか
蓮舫氏の参院選「比例」出馬の背景に“女の戦い”か 東京選挙区・立民の塩村文夏氏は「お世話になっている。蓮舫さんに返ってきてほしい」
NEWSポストセブン
泉房穂氏(左)が「潜水艦作戦」をするのは立花孝志候補を避けるため?
参院選・泉房穂氏が異例の「潜水艦作戦」 NHK党・立花孝志氏の批判かわす狙い? 陣営スタッフは「違います」と回答「予定は事務所も完全に把握していない」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《真美子さんの艶やかな黒髪》レッドカーペット直前にヘアサロンで見せていた「モデルとしての表情」鏡を真剣に見つめて…【大谷翔平と手を繋いで登壇】
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《永瀬廉と浜辺美波のアツアツデート現場》「安く見積もっても5万円」「食べログ予約もできる」高級鉄板焼き屋で“丸ごと貸し切りディナー”
NEWSポストセブン
誕生日を迎えた大谷翔平と子連れ観戦する真美子夫人(写真左/AFLO、写真右/時事通信フォト)
《家族の応援が何よりのプレゼント》大谷翔平のバースデー登板を真美子夫人が子連れ観戦、試合後は即帰宅せず球場で家族水入らずの時間を満喫
女性セブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《永瀬廉と全身黒のリンクコーデデート》浜辺美波、プライベートで見せていた“ダル着私服のギャップ”「2万7500円のジャージ風ジャケット、足元はリカバリーサンダル」
NEWSポストセブン
6月13日、航空会社『エア・インディア』の旅客機が墜落し乗客1名を除いた241名が死亡した(時事通信フォト/Xより)
《エア・インディア墜落の原因は》「なぜスイッチをオフにした?」調査報告書で明かされた事故直前の“パイロットの会話”と機長が抱えていた“精神衛生上の問題”【260名が死亡】
NEWSポストセブン
亡くなった三浦春馬さんと「みたままつり」の提灯
《三浦春馬が今年も靖国に》『永遠の0』から続く縁…“春友”が灯す数多くの提灯と広がる思い「生きた証を風化させない」
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《タクシーで自宅マンションへ》永瀬廉と浜辺美波“ノーマスク”で見えた信頼感「追いかけたい」「知性を感じたい」…合致する恋愛観
NEWSポストセブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《産後とは思えない》真美子さん「背中がざっくり開いたドレスの着こなし」は努力の賜物…目撃されていた「白パーカー私服での外出姿」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン