芸能

元NEWS23岸井成格氏「政権からの巧妙な圧力あった」

「最近のNHKが心配」と語る元『NEWS23』の岸井成格氏

 各局がしのぎを削るニュース番組の現場。そこへ、政権側からの注文が目立つようになっている。特に今年2月、放送行政を司る総務省のトップ、高市早苗総務相の発言は、圧力として受け止められ、広く報じられた。

 高市大臣は、放送局が政治的に公平性を欠く放送を繰り返す場合は放送法第4条に違反するとし「行政指導しても全く改善されず、公共の電波を使って繰り返される場合、それに対して何の反応もしないと約束するわけにいかない」と発言し、“電波停止”をにおわせたのだ。

 放送は、新聞や雑誌と異なり、国の認可事業だ。総務省が発行する免許を5年ごとに更新できないと放送を続けられなくなる。電波停止とはその免許を剥奪することを意味するもので、“反政権の姿勢”を貫く番組があると、その放送局は政府によって放送をできなくする──そう圧力をかけたと指摘されたわけだ。

 元民放連職員で、立教大学社会学部メディア社会学教授の砂川浩慶さんは「高市大臣は法律の内容を理解していない」と言う。

 この議論の中心にある放送法は、戦前の政府が言論弾圧していた過去を踏まえて制定されており、第1条ではその目的を《放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること》としている。

「いったい誰が、《放送の不偏不党、真実及び自律を保障》するのか。それは、放送局ではなく、政府です。政府が自律を保障しなくてはならないのです。また、第4条の“政治的に公平であること”という項が注目されますが、“意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること”という項もあります。つまりニュース番組には、視聴者に対して、考えるための材料を提供することが求められているのです。この観点で見ると、NHKは政府の考えを肯定するような報道が目立ちます。政治的公平という点でいえば、NHKは偏ったニュースを放送しています」(砂川さん)

 つまり反権力の報道ではなく、親権力の報道こそ、政治的に公平ではないというわけだ。時間をかけた独自の取材で定評のある『報道特集』(TBS系)でキャスターを務める金平茂紀さんも次のように指摘する。

「政治が世論と違う方向に突き進んでいくときに政府に物申したからといって、それが公平性を欠くとはいえないでしょう」

 ところが、反権力の姿勢だったと自認する『報道ステーション』(テレビ朝日系)の古舘伊知郎さんや、『NEWS23』(TBS系)のアンカーだった毎日新聞特別編集委員の岸井成格さんなど、番組内で政権に批判的な発言をしたキャスターが今春、次々と番組を降りた。そこには放送法でしばられたテレビ局への政権からの圧力があったからだという説が今も根強い。

「直接的なものはなかったけれど、あったか、なかったかでいえば、圧力はあったと思います。ただ、やり方が非常に巧妙で、『テレビ局の都合で決めました』となる」

 そう話すのは、岸井さんだ。

関連記事

トピックス

衝撃を与えた日本テレビ系列局元幹部の寄付金着服(時事通信フォト)
《24時間テレビ寄付金着服男の公判》「小遣いは月に6〜10万円」夫を庇った“妻の言い分”「発覚後、夫は一睡もできないパニックに…」
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO
《国民に愛された『TOKIO』解散》現場騒然の「山口達也ブチギレ事件」、長瀬智也「ヤラセだらけの世界」意味深投稿が示唆する“メンバーの本当の関係”
NEWSポストセブン
漫画家の小林よしのり氏
小林よしのり氏、皇位継承問題に提言「皇室存続のためにはただちに皇室典範を改正し、愛子皇太子殿下の誕生を実現しなければならない」
週刊ポスト
教員ら10名ほどが集まって結成された”盗撮愛好家グループ”とは──(写真左:時事通信フォト)
〈機会があってうらやましいです〉教師約10人参加の“児童盗撮愛好家グループ”の“鬼畜なやりとり”、教育委員会は「(容疑者は)普通の先生」「こういった類いの不祥事は事前に認知が難しい」
NEWSポストセブン
警視庁を出る鈴木善貴容疑者=23日午前9時54分(右・Instagramより)
「はいオワター まじオワター」「給料全滅」 フジテレビ鈴木容疑者オンカジ賭博で逮捕、SNSで1000万円超の“借金地獄”を吐露《阿鼻叫喚の“裏アカ”投稿内容》
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO(HPより)
「TOKIOを舐めるんじゃない!」電撃解散きっかけの国分太一が「どうしても許せなかった」プロとしての“プライド” ミスしたスタッフにもフォロー
NEWSポストセブン
大手芸能事務所の「研音」に移籍した宮野真守
《異例の”VIP待遇”》「マネージャー3名体制」「専用の送迎車」期待を背負い好スタート、新天地の宮野真守は“イケボ売り”から“ビジュアル推し”にシフトか
NEWSポストセブン
「最近、嬉しかったのが女性のファンの方が増えたことです」
渡邊渚さんが明かす初写真集『水平線』海外ロケの舞台裏「タイトルはこれからの未来への希望を込めてつけました」
NEWSポストセブン
4月12日の夜・広島県府中町の水分峡森林公園で殺害された里見誠さん(Xより)
《未成年強盗殺人》殺害された “ポルシェ愛好家の52歳エリート証券マン”と“出頭した18歳女”の接点とは「(事件)当日まで都内にいた」「“重要な約束”があったとしか思えない」
NEWSポストセブン
「父としての自覚」が芽生え始めた小室さん
「よろしかったらお名刺を…!」“1億円新居”ローン返済中の小室圭さん、晩餐会で精力的に振る舞った理由【眞子さんに見せるパパの背中】
NEWSポストセブン
多忙なスケジュールのブラジル公式訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《体育会系の佳子さま》体調優れず予定取り止めも…ブラジル過酷日程を完遂した体力づくり「小中高とフィギュアスケート」「赤坂御用地でジョギング」
NEWSポストセブン
広島県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年6月、広島県。撮影/JMPA)
皇后雅子さま、広島ご訪問で見せたグレーのセットアップ 31年前の装いと共通する「祈りの品格」 
NEWSポストセブン