ライフ

もっともらしい二者択一で迫る「誤前提暗示」にひっかかるな

もっともらしい二者択一に要注意

 私たちは自分が能動的に動いているようで、実は他者の思うように行動させられていることがある。相手の巧みな話術によって無意識のうちに誘導されているのだ。それらはすべて心理学に基づいている。その術を知ることで、我々の毎日は、もっと過ごしやすいものになる。

 埼玉県内の閑静な住宅街に暮らす山本隆二氏(仮名・61)の自宅前の広場が、昨年からゴミ集積場となった。町内会が集積場の移動を決めたため、了承したというが、夏場には玄関先までコバエが飛び交うなど、住環境は明らかに悪化した。

 彼はこの他にも、町内会の定期慰労会で使用するカラオケスナックの予約や会費徴収係など、いわゆる“雑用”を引き受けている。

「気がつけばいつも私には厄介な役が回ってくる。妻には“人がいいのもいい加減にして!”と怒られています(笑い)。昔は人がいいといわれたことはなかったけど、年をとったから丸くなったのかな」(山本氏)

 山本氏がお人好しになったのは歳のせいではない。周囲の巧みな「話術」により、そうせざるを得なかったのである。彼の行動はすべて心理学で説明できる。ゴミ集積場が変更された経緯を山本氏が振り返る。

「集積場が、我が家の玄関横か前の広場に移動することが決まり、どちらがいいかと聞かれたんです。玄関横よりは前のスペースの方がいいから、そうしてもらいました」(山本氏)

 これは心理学でいう「誤前提暗示」と呼ばれるテクニックだ。もっともらしい二者択一を迫られると、それ以外の選択肢があるのに、その2つだけで判断してしまう。町内会のルールでは、山本氏はゴミ集積場の移動に異議を申し立てることもできたが、彼はそれを知らなかった。

 慰労会の雑用係も同様に心理学で説明がつく。山本氏は初めに「幹事として慰労会の全てを仕切ってほしい」と依頼された。さすがに荷が重いと断わったが、「せめて予約や会費徴収だけでもお願いできないか」と依頼され「まだマシか」と引き受けたという。立正大学心理学部名誉教授の齊藤勇氏がいう。

「最初に無理そうな依頼をして一度断わらせ、2つ目に本当のお願いをいうと承諾を得やすい。これは“ドア・イン・ザ・フェイス”と呼ばれる心理テクニックです。一度断わった罪悪感を解消しようとする心理を利用したものです。反対に、簡単な仕事を先にお願いし、次に本来の頼みごとを追加で依頼する“フット・イン・ザ・ドア”というテクニックもあります」

関連キーワード

トピックス

山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
「とにかく献金しなければと…」「ここに安倍首相が来ているかも」山上徹也被告の母親の証言に見られた“統一教会の色濃い影響”、本人は「時折、眉間にシワを寄せて…」【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
マレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」(時事通信フォト)
人気ラッパー・ネームウィーが“ナースの女神”殺人事件関与疑惑で当局が拘束、過去には日本人セクシー女優との過激MVも制作《エクスタシー所持で逮捕も》
NEWSポストセブン
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン
今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン