リーマン・ショックは、アメリカのサブプライム住宅ローン(信用力の低い層に貸し出した住宅ローン)を小口債権化しトリプルAという格付けで世界中に売りまくった。それが不良債権化し、大手投資銀行リーマン・ブラザーズの倒産から世界的な金融危機を誘発したものである。
しかし、今はそれと同様の偽りの信用膨張は起こってないし、金融危機が発生する兆候は全くない。つまり、あの図表は事実をねじ曲げ、リーマン・ショックにこじつけて増税再延期を正当化するために作ったイカサマな代物なのだ。
また、オバマ大統領の広島訪問は、岸田文雄外相がケリー国務長官をうまく巻き込んで実現したものだと思うが、実際は、日本の前に訪問したベトナムが3泊、サミット出席を兼ねても日本は2泊だから、どちらを重視したかは明らかだ。さらに、オバマ大統領の広島演説は、核廃絶への具体的な目標を示したプラハ演説に比べると情緒的で、彼のスピーチとしては平均以下のレベルだった。
それでも結果的には共同通信社の世論調査で98%もの国民がオバマ大統領の広島訪問を「よかった」と評価し、安倍内閣の支持率もFNN(フジニュースネットワーク)の世論調査で4月より6ポイント増の55.4%になって1年ぶりに5割台を回復した。だから安倍首相は満を持して、サミットでの約束を守るためにも増税再延期、“新しい判断”で国民との約束を破ったことに関しては参院選で審判を! と打ち出したわけだ。
すべては官邸のシナリオ通りの展開となったのである。
※週刊ポスト2016年7月1日号