芸能

家事えもん他 好調日テレの「番組限定の人気者」戦略

家事えもんが話題の松橋周太郞(公式ブログより)

 日本テレビの視聴率好調が続いている。その要因を取材していくと、視聴者の興味を惹きつけるバラエティー番組のある戦略が見えてきた。ヒット番組を数多く生み出す、その”成長戦略”の秘密とは? テレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

 * * *
「3年連続の視聴率三冠間違いなし」と言われる絶好調の日テレを支えているのは夜のバラエティー番組です。それは『ザ!鉄腕!DASH!!』『世界の果てまでイッテQ!』(以下『イッテQ』)『行列のできる法律相談所』(同『行列』)『おしゃれイズム』と続く盤石の日曜だけではありません。

 月曜の『世界まる見え!テレビ特捜部』、火曜の『踊る!さんま御殿!!』、水曜の『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』(以下『笑コラ』)、木曜の『ぐるぐるナインティナイン』、金曜の『究極の○×クイズSHOW!!超問!真実か?ウソか?』、土曜の『天才!志村どうぶつ園』などの人気バラエティー番組を毎日そろえています。

 日テレのバラエティー番組が凄いのは、強力な司会者に頼るのではなく、制作サイドが視聴者心理をくすぐる企画を練り上げているから。その企画を盛り上げる一翼を担うのが、“番組限定の人気者”たちです。

『あのニュースで得する人損する人』では、家事スペシャリストの家事えもん、名店の味を再現するサイゲン大介、パン作り名人のバタコやんなど、“一芸を持つ売れない芸人”を積極活用。セミプロという親近感ある立場から、視聴者がマネできる方法を披露しています。

 また、『笑ってコラえて』では、“ブレイク手前のモデル”である佐藤栞里さんを『朝までハシゴの旅』に繰り返し起用。最初は誰もが「この子、誰?」という存在でしたが、企画にピッタリ合う気さくなキャラクターで、今や「番組の看板娘」としてサブMCを務めるまでになりました。

 その他、『月曜から夜ふかし』では、株主優待生活の桐谷広人さん、埼玉のラッパー・イルマニアなどの“個性の強い一般人”を発掘しましたし、かつては『イッテQ』のイモトアヤコさん、『行列』の弁護士軍団なども、その番組限定の人気者でした。

 もっと言えば、今をときめく水卜麻美アナも番組スタートから2年は、ほぼ『ヒルナンデス!』限定の人気者でしたし、『天才!志村どうぶつ園』のパンくんやちび、『笑点』の落語家も、「他のテレビ番組にほとんど出ない」という意味では、番組限定の人気者と言えます。

 日テレが番組限定の人気者を生み出す理由は、自らスターを作れば「その番組でしか見られない」という希少性が得られるから。どの局のどの時間帯も一部の人気タレントに出演が集中する中、希少性の高いタレントは鮮度の高さに加えて、「この人が出ているから見よう」という視聴目的に直結します。

 また、制作サイドにとって番組限定の人気者は、知名度が低い分ギャラが安く、時間がたっぷり取れるのも魅力。制作費を抑えられる上に、企画をグッと掘り下げることができるのです。

 つまり、「知名度や人気を捨てて、企画に合うスターを生み出そう」というスタンス。起用する側も、起用される側も、モチベーションが高いので、必然的に撮影現場の熱気は上がりますし、売れっ子タレントにはない一生懸命さやハングリー感が視聴者の目をクギづけにしています。

 もう1点、見逃せないのは、番組限定の人気者として抜擢されたタレントの変化。以前なら抜擢を受けると、力んで空回りしたり、緊張でふだんの実力が出せなかったりという人が多かったのですが、最近は佐藤栞里さんのように「せっかくのチャンスを楽しもう」という伸びやかなスタンスの人が増えました。実際、佐藤さんは活躍が続いたため、“限定”が解除され、まずは同局の他番組に出演し、チラホラと他局にも進出しはじめています。

 知名度の低いタレントがブレイクしていく過程を追いかけられるのは、視聴者のみならずテレビマンにとっても醍醐味のひとつ。そういえば、現在MC出演本数最多の有吉弘行さんは、ちょうど20年前の1996年に『進め!電波少年』のヒッチハイク企画で番組限定の人気者になりました。そして再ブレイク後の今は日テレで恩返しをするように、3本の番組でMCを務めています。

 今後も日テレは、戦略的に番組限定の人気者を生み出すことで、タレントを育て、他局に差をつけようとしていくでしょう。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

関連キーワード

関連記事

トピックス

硬式野球部監督の退任が発表された広陵高校・中井哲之氏
【広陵野球部・暴力問題で被害者父が告白】中井監督の退任後も「学校から連絡なし」…ほとぼり冷めたら復帰する可能性も 学校側は「警察の捜査に誠実に対応中」と回答
NEWSポストセブン
隆盛する女性用ファンタジーマッサージの配信番組が企画されていたという(左はイメージ、右は東京秘密基地HPより)
グローバル動画配信サービスが「女性用ファンタジーマッサージ店」と進めていた「男性セラピストのオーディション番組」、出演した20代女性が語った“撮影現場”「有名女性タレントがマッサージを受け、男性の施術を評価して…」
NEWSポストセブン
『1億2千万人アンケート タミ様のお告げ』(TBS系)では関東特集が放送される(番組公式HPより)
《「もう“関東”に行ったのか…」の声も》バラエティの「関東特集」は番組打ち切りの“危険なサイン”? 「延命措置に過ぎない」とも言われる企画が作られる理由
NEWSポストセブン
海外SNSで大流行している“ニッキー・チャレンジ”(Instagramより)
【ピンヒールで危険な姿勢に…】海外SNSで大流行“ニッキー・チャレンジ”、生後2週間の赤ちゃんを巻き込んだインフルエンサーの動画に非難殺到
NEWSポストセブン
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン