病気になった時に誰もが心配する医療費。制度や仕組みを知っているだけで大きく違ってくる。入院費用も制度を知れば安くなる。
あまり知られていないが、入院費用は、「看護師」の数によって大きく変わる。日本医療事務協会の藤野京子氏が解説する。
「たとえば、患者7人に対して看護師1人がつく場合、入院時の基本料金である『一般病棟入院基本料』の自己負担額は1日4773円です。この額は看護師が減るほど減額され、患者15人に対して1人だと2880円になる。差額は最大で1日1893円です」
患者に対する看護師の割合が少ないほど、入院費用は安くなるが、ひとりの看護師が受け持つ患者の数が多くなり、しっかりとした医療サービスが受けられるか不安になるかもしれない。だが、藤野氏はこうアドバイスする。
「先進医療ならともかく、骨折や盲腸炎など比較的軽度の症状での入院なら、看護師の少ない病院でも問題はありません。看護師が少なくとも、最近は看護師をサポートする看護助手が多い病院も増えています。こうした病院では、安い入院費で大病院並みの医療サービスを受けられることもあります」
「地域格差」もある。郊外の病院のほうが、入院費用が安くなるのだ。入院時、前出の「一般病棟入院基本料」に医療経費の地域差を考慮した「地域加算」が上乗せされる。1日の加算額は1級54円、2級45円~で、最も低い7級は9円だ。
「東京都の場合、1級地は23区内、7級地は東大和市と武蔵村山市、瑞穂町が該当します。1級と7級の差は1日45円ですが、1か月入院すれば1350円の差になります。骨折などの場合は症状がひどければ、入院が長期に及ぶこともある。地域加算の安い郊外の病院に入院するほうが医療費を軽減できます」(同前)
軽度の病気なのに利便性や評判を気にして大都市の病院を選んで入院した場合、「看護師」の数や「地域加算」により、入院費用がかさんでしまうのである。
※週刊ポスト2016年7月15日号