〈夏場所13日目は稀勢の里と全勝同士での対決となった。2010年の九州場所で、白鵬の連勝記録を63でストップさせた稀勢の里は、以来、ここぞという場面で白鵬に土を付けてきた「白鵬キラー」でもある。さらに、この場所、稀勢の里は若乃花(三代目)以来の「日本人横綱」誕生が懸かっていたため、13日目の両者の取組は、優勝決定戦を彷彿させる盛り上がりを見せた〉
館内全体が彼に勝たせたい雰囲気になっていましたよね? みんなが日本人力士の横綱昇進を期待していた。だけど、彼は負けた。それが彼の運命だと思うし、宿命でもある。勝てなかったことはすなわち、「横綱になるには、まだ早かった」ということなんです。
私は地方場所や巡業で日本全国を回る時、「日本人横綱はいつ誕生しますか?」とよく聞かれます。これが難しい質問なんです。
優勝だけなら、平幕力士でも達成できる。でも、「横綱に昇進する」というのは、別次元の話なんです。私の持論ですが、昇進には「運」が必要です。その運はラッキーではなく自ら掴み取ったもの。努力した人にしか運は来ない。
たくさんの努力をした人に運は与えられるのです。それが与えられた時、稀勢の里関は横綱になれるのでしょう。
●撮影/ヤナガワゴーッ!
※週刊ポスト2016年7月22・29日号