ライフ

銀歯をここまで普及させた患者不在の「値段設定」の罪

銀歯が普及したのはなぜか?

「銀歯」は、中高年世代にとって虫歯治療の代名詞。だが、世界的にみると日本独自の特殊な技術であり、虫歯の温床となっていると東京医科歯科大学の田上順次副学長は指摘する。

「詰めた銀歯が外れたり、銀歯の隙間から細菌が入って再び虫歯になるケースがあります。また、以前は銀歯が外れないように大きく削る技術教育が重視されて、虫歯ではない健康な部分の歯も削っていたのです。歯は削ると元に戻りません。削れば削るほど寿命が短くなります」

 そこで田上副学長のグループは、銀歯に代わるコンポジットレジンという、プラスチック系素材を研究開発した。これはペースト状になっているので、歯を大きく削らなくても詰めることを可能にした。

 しかし、レジンの普及はなかなか進まなかった。その背景には「値段」の問題がある。

「レジン治療は技術的に難しく、時間をかけて丁寧にやらなければなりません。にもかかわらず、それに見合う保険点数がつかなかった」(田上副学長)

 患者には「再治療に繋がりやすい銀歯」より、「歯を極力削らずに済むレジン」がいい。だが、多くの歯科医は銀歯治療を選んだ。

 大臼歯1本の虫歯治療の診療報酬を比較すると、その理由がよくわかる。

「レジン治療」の場合(モデルケース、以下同)。
・う蝕歯充填形成/126点
・充填/102点
・コンポジットレジン材料/11点

 合計239点。歯科医の売り上げは「2390円」だ(他に初診料または、再診料、およびレントゲン代が加算される)。

 一方、「銀歯治療」の場合。

・インレー修復形成/120点
・印象採得/62点
・咬合採得/16点
・大臼歯/358点
・接着材セメント/17点
・装着料/45点

 合計618点。「6180円」となる。銀歯の保険点数は、レジンの2.5倍もあるのだ。

関連キーワード

トピックス

本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン
“高市効果”で自民党の政党支持率は前月比10ポイント以上も急上昇した…(時事通信フォト)
世論の現状認識と乖離する大メディアの“高市ぎらい” 参政党躍進時を彷彿とさせる“叩けば叩くほど高市支持が強まる”現象、「批判もカラ回りしている」との指摘
週刊ポスト
国民民主党の玉木雄一郎代表、不倫密会が報じられた元グラビアアイドル(時事通信フォト・Instagramより)
《私生活の面は大丈夫なのか》玉木雄一郎氏、不倫密会の元グラビアアイドルがひっそりと活動再開 地元香川では“彼女がまた動き出した”と話題に
女性セブン
バラエティ番組「ぽかぽか」に出演した益若つばさ(写真は2013年)
「こんな顔だった?」益若つばさ(40)が“人生最大のイメチェン”でネット騒然…元夫・梅しゃんが明かしていた息子との絶妙な距離感
NEWSポストセブン
前伊藤市議が語る”最悪の結末”とは──
《伊東市長・学歴詐称問題》「登場人物がズレている」市議選立候補者が明かした伊東市情勢と“最悪シナリオ”「伊東市が迷宮入りする可能性も」
NEWSポストセブン
日本維新の会・西田薫衆院議員に持ち上がった収支報告書「虚偽記載」疑惑(時事通信フォト)
《追及スクープ》日本維新の会・西田薫衆院議員の収支報告書「虚偽記載」疑惑で“隠蔽工作”の新証言 支援者のもとに現金入りの封筒を持って現われ「持っておいてください」
週刊ポスト
ヴィクトリア皇太子と夫のダニエル王子を招かれた天皇皇后両陛下(2025年10月14日、時事通信フォト)
「同じシルバーのお召し物が素敵」皇后雅子さま、夕食会ファッションは“クール”で洗練されたセットアップコーデ
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
【長野立てこもり殺人事件判決】「絞首刑になるのは長く辛く苦しいので、そういう死に方は嫌だ」死刑を言い渡された犯人が逮捕前に語っていた極刑への思い
NEWSポストセブン
米倉涼子を追い詰めたのはだれか(時事通信フォト)
《米倉涼子マトリガサ入れ報道の深層》ダンサー恋人だけではない「モラハラ疑惑」「覚醒剤で逮捕」「隠し子」…男性のトラブルに巻き込まれるパターンが多いその人生
週刊ポスト
問題は小川晶・市長に政治家としての資質が問われていること(時事通信フォト)
「ズバリ、彼女の魅力は顔だよ」前橋市・小川晶市長、“ラブホ通い”発覚後も熱烈支援者からは擁護の声、支援団体幹部「彼女を信じているよ」
週刊ポスト
ソフトバンクの佐藤直樹(時事通信フォト)
【独自】ソフトバンクドラ1佐藤直樹が婚約者への顔面殴打で警察沙汰 女性は「殺されるかと思った」リーグ優勝に貢献した“鷹のスピードスター”が男女トラブル 双方被害届の泥沼
NEWSポストセブン
公務に臨まれるたびに、そのファッションが注目を集める秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
「スタイリストはいないの?」秋篠宮家・佳子さまがお召しになった“クッキリ服”に賛否、世界各地のSNSやウェブサイトで反響広まる
NEWSポストセブン