芸能

92才佐藤愛子氏 「よく殺されずにこの年まで生きてきた」

新著を上梓した佐藤愛子さん

「言いたいことが言えないくらいなら、死んだ方がマシ」。そう語るのは、最新エッセイ集『九十歳。何がめでたい』が発売たちまち増刷が決まりベストセラーとなっている作家・佐藤愛子さん。著書には、時代の進歩や事件から、テレビ番組や新聞の人生相談、そして自らの体に起こる故障に至るまで、佐藤さんの「言いたいこと」の数々が、ユーモラスな筆致で綴られている。単行本のオビに付けられた<御年九十二歳、もはや満身創痍。ヘトヘトでふりしぼった怒りの書>との言葉に、満身創痍!? ヘトヘト!? と心配にもなるが、果たして――。佐藤さんのスペシャルインタビューをお届けします!
(取材・文/佐久間文子)

 * * *
 佐藤さんは、持ち前の声の大きさのために、体が弱っている時でも「お元気そう」と言われてしまうらしい。

「電話だと顔なんか見えませんから、どんなにヘバっていても元気に聞こえるらしいです。耳が遠くなって大きな声を出すので、よけい元気だと思われるんですよ。長年酷使したせいで痛めた指は少しよくなりましたけど、もう満身創痍です。連載を始めた時はふざけ半分でつけたタイトルですが、92歳になって痛切に、『何がめでたい!』と思いますね」

 そう聞いていてもつい「お元気で」と言いそうになるハリのある声、歯切れのよい話しぶり。奇跡の90代である。

 隔週の連載コラムは毎回真剣勝負だった。本気で怒るエネルギーに圧倒され、元気が出る。

「長年、文章で怒るふりをしてきて、本当に怒ってるんだか怒るふりをしてるんだか自分でもわからなくなってきてるんだけど(笑い)。『来る者拒まず去る者追わず』の主義ですから、いろんな目に遭うんです。私自身が変な人間ですから、また変なのが集まってくるんですよ。そういうオーラが出ているんじゃないかしら」

『九十歳。何がめでたい』の中でも、地方から出てきた見知らぬ少女を家に泊め、大金を盗まれた体験が書かれている。一度でもそんなことがあれば、以後、おかしな来客を断りそうだが、佐藤さんは相変わらず受け入れ続けている。不用品買い取り業者の青年を家に上げ、なぜか冷蔵庫にあったスイカを無理やり食べさせたりもする。

「スイカの件は、食べ物を捨てたくない一心です。身を守るためにはうさんくさい人には会わない方がいいんでしょうけどね。うちの者が先に受話器を取ると断ったりしますでしょう。それでは面白くない。だから、電話のベルが鳴ると走るんです(笑い)。強盗にも入られたことがあるし、よく殺されずにこの年まで生きてきたと思います」

※女性セブン2016年8月25日号

あわせて読みたい

関連キーワード

関連記事

トピックス

靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン