「言いたいことが言えないくらいなら、死んだ方がマシ」。そう語るのは、最新エッセイ集『九十歳。何がめでたい』が発売たちまち増刷が決まりベストセラーとなっている作家・佐藤愛子さん。著書には、時代の進歩や事件から、テレビ番組や新聞の人生相談、そして自らの体に起こる故障に至るまで、佐藤さんの「言いたいこと」の数々が、ユーモラスな筆致で綴られている。単行本のオビに付けられた<御年九十二歳、もはや満身創痍。ヘトヘトでふりしぼった怒りの書>との言葉に、満身創痍!? ヘトヘト!? と心配にもなるが、果たして――。佐藤さんのスペシャルインタビューをお届けします!
(取材・文/佐久間文子)
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佐藤さんは、持ち前の声の大きさのために、体が弱っている時でも「お元気そう」と言われてしまうらしい。
「電話だと顔なんか見えませんから、どんなにヘバっていても元気に聞こえるらしいです。耳が遠くなって大きな声を出すので、よけい元気だと思われるんですよ。長年酷使したせいで痛めた指は少しよくなりましたけど、もう満身創痍です。連載を始めた時はふざけ半分でつけたタイトルですが、92歳になって痛切に、『何がめでたい!』と思いますね」
そう聞いていてもつい「お元気で」と言いそうになるハリのある声、歯切れのよい話しぶり。奇跡の90代である。
隔週の連載コラムは毎回真剣勝負だった。本気で怒るエネルギーに圧倒され、元気が出る。
「長年、文章で怒るふりをしてきて、本当に怒ってるんだか怒るふりをしてるんだか自分でもわからなくなってきてるんだけど(笑い)。『来る者拒まず去る者追わず』の主義ですから、いろんな目に遭うんです。私自身が変な人間ですから、また変なのが集まってくるんですよ。そういうオーラが出ているんじゃないかしら」
『九十歳。何がめでたい』の中でも、地方から出てきた見知らぬ少女を家に泊め、大金を盗まれた体験が書かれている。一度でもそんなことがあれば、以後、おかしな来客を断りそうだが、佐藤さんは相変わらず受け入れ続けている。不用品買い取り業者の青年を家に上げ、なぜか冷蔵庫にあったスイカを無理やり食べさせたりもする。
「スイカの件は、食べ物を捨てたくない一心です。身を守るためにはうさんくさい人には会わない方がいいんでしょうけどね。うちの者が先に受話器を取ると断ったりしますでしょう。それでは面白くない。だから、電話のベルが鳴ると走るんです(笑い)。強盗にも入られたことがあるし、よく殺されずにこの年まで生きてきたと思います」
※女性セブン2016年8月25日号