ライフ

余命宣告受けた浅野史郎氏 正確な解釈して前向きに

余命宣告を受けても絶望する必要はない

「余命●年」や「余命●か月」などと聞くと、大半の人は「死ぬまでに残された命の期間」と考えるだろう。だが、一般に医者が患者に告げる数字は、その人の残りの寿命を指すわけではない。ある病気の「生存期間中央値」なるものを告げるケースが大半だという。

 生存期間中央値とは、その病気に罹った患者群の半数が死亡するまでの期間である。例えば100人の患者グループを対象とした場合、50人目が亡くなった時点(期間)を生存期間中央値というのだ。

 大腸がん患者の余命が「2年半」と告げられるケースが多いのは、調査した大腸がん患者群の生存期間中央値が30.9か月だったとの結果による。患者側はてっきり自分の病状や進み具合などを勘案されて弾き出された数字と思ってしまうが、全く無関係なのだ。

 2009年、成人T細胞白血病(ATL)を発症し、骨髄移植を受けた元宮城県知事の浅野史郎氏が言う。

「病名を告げられた時も目の前が真っ暗になるほどショックでしたが、医師から“余命11か月”と告知された時も同じぐらいショックでした。ただ、生存期間中央値について理解すると、すぐに前向きになれた。私は“50%の人は11か月以上生きているんだ”と受け止められたのです」

 告知から1時間後、浅野氏は「俺は病気と闘うから。勝つから支援してくれ」と妻に宣言。浅野氏が短時間で闘病に専心する気持ちへ切り替えができたのも、余命の本当の意味を知ったことが影響している。

 だが、浅野氏のように余命宣告を正確に、そして前向きに捉えられる患者は多くない。一般に余命宣告を受ける病気の代表格はがんだが、老衰や重度の肝硬変、拡張型心筋症などの患者にも告げられるケースがある。

 3年前、寝たきりが続いていた大野春美さん(仮名・64)の母親(91)は訪問医師から、「老衰です。余命1~2か月でしょう」と告知された。ところが母親は現在も寝たきりのままだが、意識もはっきりしている。

「嬉しい誤算で済めばいいのですが、余命を告知されてから遺産相続で親族間が揉めて、関係がバラバラになってしまったんです。それ以来、母を見舞いに来てくれた私の姉妹も姿を見せなくなり、母が非常に寂しがっているのが不憫で……」(大野さん)

※週刊ポスト2016年9月9日号

関連記事

トピックス

雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
国仲涼子が『ちゅらさん』出演当時の思い出を振り返る
国仲涼子が語る“田中好子さんの思い出”と“相撲への愛” 『ちゅらさん』母娘の絆から始まった相撲部屋通い「体があたる時の音がたまらない」
週刊ポスト
「運転免許証偽造」を謳う中国系業者たちの実態とは
《料金は1枚1万円で即発送可能》中国人観光客向け「運転免許証偽造」を謳う中国系業者に接触、本物との違いが判別できない精巧な仕上がり レンタカー業者も「見破るのは困難」
週刊ポスト
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“最もクレイジーな乱倫パーティー”を予告した金髪美女インフルエンサー(26)が「卒業旅行中の18歳以上の青少年」を狙いオーストラリアに再上陸か
NEWSポストセブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン