芸能

朝ドラ「戦争=人殺し」という描写の薄っぺらさを専門家批判

偏向的な思想が明らかに イラスト/トモリタクヤ

 数々の名作を世に送り出してきたNHK『連続テレビ小説』(朝ドラ)には、戦時下の日本をテーマにした作品が多い。だが、国史研究家の小名木善行氏は「朝ドラで描かれる日本軍はあまりに恣意的ではないか」と疑問を呈す。

 * * *
 NHKの朝ドラは『おしん』の頃からよく見ています。良質な作品が多く、毎朝これを見ないと一日が始まらないという人もいるでしょう。

 しかし、近年の作品は思想性が色濃く反映されたものが多いように感じます。たとえば、2010年に放送された『ゲゲゲの女房』では、主人公の夫・茂が戦時中に南方の島・ラバウルの最前線に送られた戦争体験を語る場面があります。

 壊滅した前線から味方の部隊に命からがらたどり着くと、茂は上官たちから「命より貴重な銃を捨ててよく帰ってきおったなぁ」「なぜお前だけ生きて戻ったんだ!」と責め立てられる。これは、モデルとなった水木しげるさんの実体験です。ただし、その叱責の後には「今回のことは不問に付す。但し、次の戦闘では必ず挽回せい!」という上官の台詞が続くのです。

 ちょっとした判断ミスによって命が失われるような過酷な状況では、軍の上官たるもの、常に厳しくあらねばならない。これは仕方のないことです。ただ、「不問に付す」という台詞で上官の愛情を示しているにもかかわらず、映像では上官たちがとても憎々しい表情をしており、憎たらしい存在として描かれている。文章の場合と違って、映像作品ではその“余白”にさまざまな要素を作り手が盛り込めます。旧日本軍とその上層部を「絶対的な悪」に仕立てようとする作為的なものを感じてしまうのです。

 2013年に放送された『ごちそうさん』は、戦時下で子の無事を願う母親の気持ちがよく描かれたドラマでした。また、当時の家庭におけるひもじい食生活や、食料を得るための主婦の懸命な姿も描写されています。

 一方で、戦争に対する偏向的な思想が描かれた作品でもありました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

多くの外国人観光客などが渋谷のハロウィンを楽しんだ
《渋谷ハロウィン2025》「大麻の匂いがして……」土砂降り&厳戒態勢で“地下”や“クラブ”がホットスポット化、大通りは“ボヤ騒ぎ”で一時騒然
NEWSポストセブン
声優高槻かなこ。舞台や歌唱、配信など多岐にわたる活躍を見せる
【独占告白】声優・高槻かなこが語る「インド人との国際結婚」の真相 SNS上での「デマ情報拡散」や見知らぬ“足跡”に恐怖
NEWSポストセブン
人気キャラが出現するなど盛り上がりを見せたが、消防車が出動の場面も
渋谷のクラブで「いつでも女の子に(クスリ)混ぜますよ」と…警察の本気警備に“センター街離れ”で路上からクラブへ《渋谷ハロウィン2025ルポ》
NEWSポストセブン
クマによる被害
「走って逃げたら追い越され、正面から顔を…」「頭の肉が裂け頭蓋骨が見えた」北秋田市でクマに襲われた男性(68)が明かした被害の一部始終《考え方を変えないと被害は増える》
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「日本ではあまりパートナーは目立たない方がいい」高市早苗総理の夫婦の在り方、夫・山本拓氏は“ステルス旦那”発言 「帰ってきたら掃除をして入浴介助」総理が担う介護の壮絶な状況 
女性セブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
《コォーってすごい声を出して頭をかじってくる》住宅地に出没するツキノワグマの恐怖「顔面を集中的に狙う」「1日6人を無差別に襲撃」熊の“おとなしくて怖がり”説はすでに崩壊
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン
真美子さんが完走した「母としてのシーズン」
《真美子さんの献身》「愛車で大谷翔平を送迎」奥様会でもお酒を断り…愛娘の子育てと夫のサポートを完遂した「母としての配慮」
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)千葉県の工場でアルバイトをしていた
「肌が綺麗で、年齢より若く見える子」ホテルで交際相手の11歳年下ネパール留学生を殺害した浅香真美容疑者(32)は実家住みで夜勤アルバイト「元公務員の父と温厚な母と立派な家」
NEWSポストセブン
アメリカ・オハイオ州のクリーブランドで5歳の少女が意識不明の状態で発見された(被害者の母親のFacebook /オハイオ州の街並みはサンプルです)
【全米が震撼】「髪の毛を抜かれ、口や陰部に棒を突っ込まれた」5歳の少女の母親が訴えた9歳と10歳の加害者による残虐な犯行、少年司法に対しオンライン署名が広がる
NEWSポストセブン