19時21分:15時から始まったシンポジウムは、18時半頃終了。関係者との懇談を終えたA氏が関係者数人と一緒にホテルから出てくる。しばらく車寄せで談笑した後、A氏は関係者らを見送った。
ひとりになったA氏はポケットからスマホを取り出す。画面を見た彼は、それまでの仕事モードの表情から一転し、頬がだらしなく緩んだ。浮かれている様子は遠目にもわかる。
19時35分:A氏は車寄せに入ってきたタクシーに乗車。調査チームもバイクとタクシーに分かれて追跡する。
20時01分:30分ほど車を走らせると、歓楽街近くのシティホテルへ。どうやらここが今夜の宿泊先のようだ。チェックインしたA氏はエレベーターに乗り込んだが、調査チームはここでは深追いせず、A氏が5階で降りたことを1階で確認するのみだった。
「エレベーターで何度も一緒になるのは、マルタイに気付かれる可能性が一気に高くなる。ここぞという場面に備えて、自重しました」(ベテラン調査員)
20時22分:再びA氏がホテルから出てきた。そのまま歩いて歓楽街方面へと向かう。
「歩いて尾行する際は、文字通り『尻』を見るようにします。見てもせいぜい腰くらいまで。顔を上げていると振り返られたときに眼が合い、相手の印象に残ってしまう」(同前)
20時30分:歩きスマホだったA氏は歓楽街の入り口で突然立ち止まる。キョロキョロし、周囲の警戒を始める。誰かと待ち合わせをしているようだ。
20時35分:40代半ばの女性がA氏に手を振りながら近寄っていく。調査員は決して目を離すことなく、持っていたICレコーダーに向かって、「45~46歳、身長160センチ弱、ぽっちゃり。髪の毛は肩までの茶髪で、ゆるいウェーブ。白のワンピースにストールを巻いている」とメモ代わりに吹き込んでいく。女性と対面したA氏は満面の笑みを浮かべる。ふたりは、間に少し距離を置きながら歓楽街を歩き始めた。
20時48分:名物の牛タンが堪能できる郷土料理店の店先に置かれたメニューを見ながら、2分ほど話し合ったあと入店。店の外からカウンター席に並んで座るふたりの様子が確認できた。
ビールや地酒を飲んでリラックスしたのか、A氏は女性の髪を撫で始める。女性も甘えた様子でA氏の肩にしなだれるなど、親密な様子がうかがえた。