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【書評】安倍マリオでわかった「煽動の技術」が不要な日本

【書評】『絶対の宣伝 ナチス・プロパガンダ3 煽動の方法』/草森紳一・著/文遊社/3300円+税

【評者】大塚英志(まんが原作者)

 あのさ、リオ五輪の閉会式の安倍マリオ、あれバカでしょ。webだけでなく、TVなどの旧メディアでさえ「世界中大絶賛」と自己愛妄想全開中だけれど、呆れて物が言えないだけだよ。批判すれば即「反日」だろうし、小学館系のドラえもんも出て来たから『週刊ポスト』も叩けない。でも、もう一度言う。バカだよ、安倍も、あれ見て喜んだやつも。

 紅白でサザンの桑田が、ヒトラーもどきのチョビ髭で安倍を揶揄したと騒動になったのは一昨年末だったか。しかし安倍をヒトラーに、この時代をファシズムに喩えるのは当時から釈然としなかった。でも、安倍マリオでやっとわかったよ。単にバカなんだよ、ファシズムやるには頭悪すぎるんだよ、安倍もこの国も。

 以前、ニコ動の川上量生がもはや日本人の教養は『ジャンプ』(つまり、小学生レベル)だと言い切っていたけれど、日本の教養水準を惜しげもなく世界に堂々と示したのは確かだ。反知性主義どころのレベルじゃない。トランプはともかく、オバマとかクリントンとか、こういう国(バカ)と同盟組むの、本当は嫌だろうな。

 第一、ファシズムにはファシズムなりの美学や教養がある。安倍とその周りがどれほどバカかは日本浪漫派と日本会議を比べればわかる。ヒトラーはともかく、ゲッベルスだってフリッツ・ラングをヘッドハンティングするぐらいの映画的教養はあった。ラングに逃げられ、替わりはレニ・リーフェンシュタールだったが、こっちは今井絵理子あたり。

 さて、草森はこの本でナチズムの本質を参加型ファシズムだと見ている節がある。卓見だ。だが、国民規模でバカでも参加できるSNSというツールが誕生した今、あんな「宣伝」で国民が「動員」できるなら「煽動の技術」もへったくれもない。ぼくがゲッベルスだったら国民バカすぎてやってられないよな、と思ったら、安倍マリオ、森元首相の発案だって。サメの脳みそレベルか、民度。森、失脚しないはずだ。

※週刊ポスト2016年9月30日号

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