温暖化による海水温の上昇も、漁獲量を左右する。回遊魚の秋刀魚は冬から春にかけて群れで北へと移動し、夏から秋にかけて南下。暖流と寒流が交差する潮目に魚が集まるが、今年は漁場が道東沖からロシア水域へと離れてしまい、思わぬ余波も生じている。
「漁場が遠くて往復に時間がかかり、ロシア水域への出入りにはチェックポイントと呼ばれる“関所”を通過しなくてはならない。去年から監視体制が厳しくなって、漁師は苦労しているんだ。シケなどで融通をきかせてくれることもあるけれど、日によっては何十艘も“関所”で列を作ることがある。新鮮な秋刀魚を積んでいるのに早く港へ帰れないのはつらいよ」(港の漁師)
様々な要因が重なって漁獲量はまだ少ないが、朗報もある。今年の秋刀魚は十分プランクトンを食べて回遊したため、去年より脂の乗りも、味もよいという。10月頃からは宮城・気仙沼など三陸の港も活気づき、千葉・銚子あたりまで南下していく。秋刀魚のシーズンはまだまだこれから。一期一会の秋刀魚を逃すことなく堪能したい。
撮影■中庭愉生
※週刊ポスト2016年10月7日号