影響は業界全体に及ぶ。桐ヶ谷斎場など6斎場に61基の火葬炉を所有する東京博善の管理本部は「毎年12月に葬儀業者向けに翌年の友引日を記した冊子を配っているが、その時までに六曜が決まっていなければどうしたらいいか」と話す。僧侶でジャーナリストの鵜飼秀徳氏もこういう。
「寺院関係者は葬儀がない友引をコンサート観賞や家族旅行に充てる場合が多い。友引がなくなれば休日を決められなくなる」
春分などを決める立場の国立天文台(文科省所管)は「あれこれいう立場ではない」とコメントするのみ。
日本カレンダー暦文化振興協会は解決に向けて昨年8月、2033年11月に閏月(※暦のズレを調整するために例外的に設けられる「13番目の月」)を置く案を発表したが、この方法も旧暦のルールを全て満たすわけではない。
そのため、「他の案が今後出てきてもおかしくない」(業界関係者)といい、仮に友引がカレンダーによってバラバラなら、火葬場、葬儀業者、僧侶の日程が合わず、葬儀日程がスムーズに決められない事態も発生する。住職の都合に合わせてスケジュールを設定したら遠方で骨を焼かされるハメに──といったケースが続出する懸念もある。
ただでさえ2033年頃は団塊世代が80代後半になり、“葬儀インフラ”が足りなくなる時代だ。「混乱を避けるためには、できる限り見解を統一させることが好ましい」(中牧弘允・暦振協理事長)
「穏やかな死」のためにも、無関心ではいられない。
※週刊ポスト2016年10月7日号