ライフ

医師にとって一番困るのは「症状をはっきり話せない患者」

 3時間待ちの3分診療──これが、日本の病院の常識なのだという。「わずか3分の診療時間で、いかに医師に病状を伝えるかは、患者の会話術次第」と話すのは、松戸神経内科と東京高輪病院に勤務する現役医師・高橋宏和さん。つまり、3分間で病状をしっかり伝えられないと、“損する患者”になりかねないというわけだ。

「いちばん困る上に、多いのが、症状の経過をはっきり話せない患者さん。調子が悪いから病院に来たのに、いつから悪くなったか覚えていない、わかっていない人がいます。同じ腹痛でも、それが昨日からなのか、先週からなのか、1か月前からなのかで診断が変わってくる。症状もさることながら、“経過”が重要なんです」(高橋さん)

 そのほか、「白くて丸い薬をのんでいる」と言うだけで薬の名前がわからない、ということもよくあるそう。

 患者からもらう情報が医師の判断の大きな根拠になる。その根本があやふやでは、きちんとした診断はできない。

 また、なんでも医師に決めてもらおうとする患者も多いという。

「どう治療をするかは、それぞれの人生観や事情で変わってきます。例えば、抗がん剤を使えば寿命が3か月延びる場合、それで孫の顔が見られるなら、多少の副作用があっても使おうと思うかもしれません。しかし、副作用に苦しんでまで生きたくないなら使わない、ということになる。このどちらを選ぶかまで、医師に決めさせようとする。医師は医学的な意見は言えますが、最終的にどうするか決めるのは患者さんであるべき。それが決まらないと治療も進められません」(高橋さん)

 アメリカの病院で臨床に携わる医師・上野直人さんは、いい医療を受けるためには患者自身が自分の病気のことをよく知るべき、と釘をさす。

「最初の診察で医師が病気について説明し、次に来た時にその内容を聞いてみると、全くわかっていない患者さんが多い。本人が病気を理解していないと、治療はうまくいきません」

 特に、致命的な病の場合、病気を理解することが、とても重要になる。

「今は研究が進み、治療法の選択肢が増えています。しかし、すべての治療法が絶対的というわけではなく、またすべての医師が名医でもありません。だから、全部お任せにするのはとても危険。アメリカの一部の患者さんは病気のことをよく勉強していますが、日本では患者さんが医師任せの傾向にあり、自分で勉強しようという意識が低いと感じます」(上野さん)

 自分の病状を明確に話すこと、そして病気について勉強することが、「得する患者」への第一歩なのだ。

※女性セブン2016年10月13日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン