国内

山崎拓氏 僕が聞いた加藤紘一の最後の言葉

山崎拓・自民党元幹事長 撮影/太田真三

 政界引退から4年、回顧録『YKK秘録』を今夏に上梓し、盟友・加藤紘一氏を失った今、この男は何を思うのか。ジャーナリストの青木理氏が山崎拓氏にインタビューした。「YKK」のもう一人は小泉純一郎・元首相である。

 * * *
 選挙制度。世襲議員の増加。戦争の記憶の風化。これらが相まって政界の劣化が進行している。加えて言うなら、右肩上がりの成長期がはるか後景に遠ざかり、将来をしかと見通せない不安と焦燥が人々の間に沈殿している。昨今、評伝や発言録がベストセラーになるなど田中角栄が奇妙なブームになっているのは、そのひとつの証左なように私には思える。

 だが、山崎はこう言って首を振る。

「僕はおかしいと思う。立志伝中の人物であることは認めるけれども、功罪があまりに大きい。功のボリュームも大きければ、罪も大きくて、相殺されてゼロだ」

──罪というのはやはり……。

「金権政治ですよ」

 山崎が加藤や小泉とともに衆院議員に初当選したのは1972(昭和47)年。首相の座には当時、福田赳夫との「角福戦争」を制した田中角栄がいた。

「当時、小泉は福田の書生だった。田中に敗れた晩、小泉は福田の酒に付き合った。金権選挙への呪いの言葉を聞いとるわけです。それが小泉の反経世会のDNAですよ」

 山崎もまた、強烈な情景を目の当たりにした。続けて山崎の話。

「僕らよりも1期上に“田中チルドレン”の錚々たる面々がいてね。小沢一郎、羽田孜、梶山静六、奥田敬和、渡部恒三。我々が初当選したら、歓迎会みたいのをやってくれた」

 山崎によれば、酒を飲み、盛り上がった時、出席者が羽田に尋ねた。

「ところで羽田さん、総裁選ではいくらもらったんですか?」

 羽田はこう答えた。

「3000万だよ。なあ皆、貰ったよな」

 そう言ったら皆、肯いた。まるで昨日のことのように山崎が振り返る。

「みんなで3000万かと思ったら、1人3000万。1年生(議員)ですよ。ならば2年生、3年生はいくらもらったのか。田中角栄はそれぐらいカネを配って(総裁選を)ひっくり返した。普通なら福田ですよ」

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン