国内

深刻な空き家問題 害虫発生や犯罪の温床となるケースも

ゴミの不法投棄や犯罪などの危険性も指摘される空き家問題(Ph:アフロ)

 深刻化がささやかれる空き家問題。『住宅・土地統計調査』(2013年総務省調べ)によれば、全国の空き家は約820万戸。空き家率は13.5%に達し、今や日本の住宅の7戸に1戸が空き家という計算になる。

 ドイツの研究所の試算によれば、この数字が30%を超えると、税収や上下水道、電気供給等の点で人の住む町として成立しなくなるという。

 野村総研の試算では、2040年の日本全国の空き家率は43%。悪夢の未来が迫っている。住宅ジャーナリストの山本久美子さんが指摘する。

「日本の人口構造上、避けられない問題です。少子高齢化で実家を受け継ぐ子供の数が減少し、若い労働力は都市部に集中する。親が亡くなると、自分の住まいから離れた実家が誰にも管理されず空き家になるケースが増えています」

 現在の税制も空き家を後押しする要因となっている。築年数にかかわらず建物が建ってさえいれば、固定資産税の課税額が更地の6分の1(200平方メートル超の土地は3分の1)になるという特例措置があり、空き家にしておけば節税に繋がるのだ。

 だが、樹木希林が『三井のリハウス』のCMでつぶやくように、家は人が住まないとすぐに老朽化する。

「放置が続くと、雑草や樹木が伸び放題になり、害虫やネズミが大量に発生します。敷地内に粗大ゴミや生ゴミが捨てられたりと、衛生面も悪化してしまう。ホームレスや不審者が侵入したり、不良のたまり場になるケースもあります。空き家が“犯罪の温床”になってしまうんです」(前出・山本さん)

 社会問題化した空き家に対し、昨年5月、国も重い腰をあげた。

「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、空き家の所有者が不明の場合、自治体が固定資産税等の個人情報を閲覧し、所有者を特定できるようになった。

 自治体は倒壊の恐れや衛生上の問題がある空き家を「特定空家」に指定し、立ち入り調査や所有者への勧告、命令も発動可能。

 勧告や命令を無視すれば、税制の特例措置が解除され、固定資産税が6倍になることもあり、最終的には「行政代執行」の形で自治体が空き家を強制的に解体できるようになった。

「行政代執行は、『地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼす特定空家』と認められたものが前提ですが、具体的にどのレベルが該当するかは各自治体にゆだねられています。なお解体費用は所有者に支払い義務が生じます」(前出・山本さん)

※女性セブン2016年10月20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《輝く金髪姿で再始動》こじるりが亡き夫のサウナ会社を破産処理へ…“新ビジネス”に向ける意気込み「子供の人生だけは輝かしいものになってほしい」
NEWSポストセブン
中国でも人気があるキムタク親子
《木村拓哉とKokiの中国版SNSがピタリと停止》緊迫の日中関係のなか2人が“無風”でいられる理由…背景に「2025年ならではの事情」
NEWSポストセブン
トランプ米大統領によるベネズエラ攻撃はいよいよ危険水域に突入している(時事通信フォト、中央・右はEPA=時事)
《米vs中ロで戦争前夜の危険水域…》トランプ大統領が地上攻撃に言及した「ベネズエラ戦争」が“世界の火薬庫”に 日本では報じられないヤバすぎる「カリブ海の緊迫」
週刊ポスト
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
新大関の安青錦(写真/共同通信社)
《里帰りは叶わぬまま》新大関・安青錦、母国ウクライナへの複雑な思い 3才上の兄は今なお戦禍での生活、国際電話での優勝報告に、ドイツで暮らす両親は涙 
女性セブン
東京ディズニーシーにある「ホテルミラコスタ」で刃物を持って侵入した姜春雨容疑者(34)(HP/容疑者のSNSより)
《夢の国の”刃物男”の素顔》「日本語が苦手」「寡黙で大人しい人」ホテルミラコスタで中華包丁を取り出した姜春雨容疑者の目撃証言
NEWSポストセブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン