文月氏は詩やエッセイを書く時も「予めプロットを練った上で、エピソードや言葉を再構成する」という。詩人とはいえ言葉がひとりでに降りてくるわけもない。だが世間はそう思わないらしく、飲み会などでは〈詩人、ここで一句!〉と無茶ブリされ、〈キャラから少しでも外れると「詩人のくせに」となじられるのだ〉。

 が、〈理不尽な扱いを受けたら、その状況を楽しまなくては損だ〉と考えるのが文月流。中でも顕著なのが三章「セックスすれば詩が書けるのか問題」だろう。

 ある時、〈あなたの朗読にはエロスが感じられないね。最近セックスしてる?〉とイベントの男性客から突然問われた氏は、〈関係ないと思いますけど〉と反論するが、〈あるね〉となおも持論を展開されてしまうのだ。

 注目はその後だ。作者の恋愛経験と作品性には実際どんな関係があるのか。そもそも女らしさって何? 等々、いわゆるフェミニズム的な言葉遣いとは違う自分なりの言葉で、性別に関する諸問題を原点に立ち返って考えようとする。

「別に男性批判じゃないんです。彼がなぜそんなことをいったのか、という背景が知りたくて、理不尽な目に遭った以上はトコトン探求したい気持ちですね。なぜ女子だけが容姿で格付けされ、なぜ恋愛しろといわれてしまうのか。私は自分の中にある違和感を言葉にすることで、解き明かそうとしてきました。それが詩の形になったのは10歳の時。人に届く文章を書くことには、当時から意識的でした。

 もちろんセクハラめいた質問に対して、その場で冷静に答えるのは難しい。でも後から文章にする際の客観性と、渦中でこそ感じる切実さの、2つの時間が本書には同居している。時間ってそういうものだし、人間は変化するからこそ、面白くも切なくもある存在だと思うんです」

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン