米田氏には、打撃力を買われて球団から打者での入団を持ちかけられた逸話もあり、実際に2シーズンで5本塁打を記録している。
「当時は報復を恐れ、打席に入った投手には厳しいインコース攻めはなかった。私の場合、ヤマを張って、思い切り振っていたが、大谷は純粋にバッターとして勝負しての22本塁打ですから、やっぱり規格外でしょう。
この大車輪の活躍ができる馬力を見ていると、かつて稲尾和久(西鉄)が1958年の日本シリーズで5連投の4連勝、しかもそのうち1試合は自らサヨナラ本塁打を打つという活躍で日本一になった姿と重なりますね。連投できる体力があったので、特に短期決戦にはめっぽう強かった。
大谷は首脳陣から100球前後に球数を制限されていた時期もあったみたいだけど、彼のようなタイプは完投させるべきでしょうね。7回で100球に達したとしても、あと2回は惰性で投げられる。その馬力が稲尾を彷彿とさせるわけです」
たしかにポストシーズンの活躍ぶりは“神様、仏様、大谷様”と称するに相応しいものだ。
歯に衣着せぬ評論で知られる野球評論家の江本孟紀氏は、日本プロ野球のレジェンドたちの“組み合わせ”で表現しようとする。
「大谷は投手としても、野手としても、専念すれば昭和の大記録を更新できる力のある化け物です。投打を別の選手の組み合わせで考えれば、『金田正一+張本勲』『ダルビッシュ+イチロー』を超えているんじゃないでしょうか。打者としてだけみると王(貞治)さんに匹敵する力です」
今季のギネス級の活躍で、すでに存在感では「ダル+イチロー」を凌駕し、3年連続30勝という未到の記録を持つ稲尾と868本塁打の世界の王という組み合わせで表現するしかない──そんな領域に達してしまったのか。
※週刊ポスト2016年11月4日号