二つ目は、家庭教育の改革だ。日本の親の多くは子供に「先生の話をよく聞きなさい」と諭し、隣の子供が進学塾に通い始めたら自分の子供も入れようとする。20世紀の教育システムの中で周りより遅れさせまいと必死になっているのだ。

 しかし、イスラエルや台湾や北欧の家庭教育は全く違う。隣近所はどうでもいいから、とにかく人より抜きん出て競争に勝てと教える。英語で言うところの「sink or swim」(溺れたくなかったら泳げ)である。

 日本にも「かわいい子には旅をさせよ」「獅子の子落とし」という諺(ことわざ)があるのに、それがいつの間にか忘れ去られてしまった。子供は甘やかさず外の世界に出して、荒波にもまれる経験をさせることが重要なのである。

 日本の場合、音楽、バレエ、スポーツなど学校教育や学習指導要領が及ばない分野では、世界で通用する若者が続々と登場している。いま経済や経営の分野で同じように傑出した人材が求められていると考えれば、個別指導や家庭の役割などに関して私の言っていることが、より理解しやすくなるのではないだろうか。

 そして三つ目は、企業側の責任である人材採用・評価・給与システムの改革だ。大半の日本企業は大学新卒者を4月に同じ初任給で一括採用し、最初のうちはエスカレーター式に昇進させている。だが、そういう均等なシステムはもうやめて、いつでも世界のどこからでも傑出した人材を高い給料で個別採用するようにしなければならない。

 いま多くの日本企業が行き詰まっているのは、21世紀に対応できる優れたリーダーがいない上、自分の会社や業界しか知らない視野の狭い社員ばかりだからである。この閉塞状況を打破するためには“異邦人”を入れて世界標準を知り、社内に嵐を起こさねばならないのだ。

 資源のない日本は、人材しか繁栄する手段がない。その危機感を持って根本的な人材改革に取り組まなければ、この国は自滅するしかないだろう。

※週刊ポスト2016年11月11日号

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