当時、朝日は世間から「カネで将棋界に参入した」と強く批判された。読売も今回とは異なり、朝日vs毎日の戦いを何度も詳しく報じ、こんな痛烈な朝日批判を掲載した。
〈より大きなものを自ら創設しようとせずに、他社のものをうかがう朝日の体質には疑問を呈せざるを得ない〉
朝日新聞社広報部は「ニュース価値に鑑みて報道している」というが、今回の過熱報道は、棋界で“歩”扱いを受けてきた朝日が“王将”に向けて放った10年前の意趣返しという見方が大勢だという。別の棋界関係者が語る。
「竜王戦の格式に大きな傷がついたのは間違いない。読売が今後、連盟にスポンサー料の引き下げなどを求めていく可能性もある。3億円というスポンサー料は高額ですから、そうなれば、財政難の連盟は窮地に陥ります。だからこそ連盟は、慌てて火消しに奔走しているのです」
渦中の三浦九段は一連の疑惑に「反論文」を出した後、群馬県内の自宅に戻らず消息を断ったままだ。
三浦九段の師匠である元日本将棋連盟専務理事の西村一義氏のもとを訪れると、「連盟の調査結果を待たない限り、何とも言えません。もちろん、三浦のことは心配していますよ」と語った。
仁義なき戦いを繰り広げる朝日と読売。「盤外戦」で詰むのはどちらか。
※週刊ポスト2016年11月11日号