◆国は敗訴しても上告

〈不合理な法解釈により不利益が生じるのは、その額の大小にかかわらず看過できない〉

 東京地裁は判決文で厚労省のやり方を厳しく批判し、S氏は勝訴した。国は控訴したが、2審の東京高裁でもS氏が勝訴した(判決は昨年9月)。それでもなお、厚労省は最高裁に上告して「64歳11か月退職者の年金減額」という過ちを改めようとしない。

 公判では呆れる事実も発覚した。厚労省はわずか2万円の年金未払いをS氏に返金したくないがために、年金額を正しく計算していたオンラインのシステムを、年金コンピューターの間違った計算式に合わせるようにこっそり改変させていたのだ。国が裁判所に提出した控訴理由書には、そのシステム変更が「1億円以上の多額の費用をかけて行われた」と記載されている。

 投じられた1億円以上の国民のカネは、年金官僚の保身ための無駄金以外の何ものでもない。

※週刊ポスト2016年11月11日号

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